3月末、友人を見送った。
さよならをしたその日は、もう十分話したし悔いは無いと思った。けれど、ふとした瞬間に「あぁあの人が居たらなぁ」となることがある。
自分自身、弱々しいヤツだとつくづく思う。でも記憶が薄れる前に、あの人のことをここに書き留めておく。
とにかく多才で芸達者な人だった。作ったものを色々見せてもらったが、本当にいろんな分野に手を伸ばしていた。頭の回転が恐ろしいほど早かった。いろんな謎解きのワールドに行ったが、あっという間に解いてしまう。しかし一緒に参加した他のメンバーの謎解きも尊重して、それも楽しげにしていたのが印象的だった。
多くの映画を観ていて、面白い映画をいっぱい教えてもらった。自分も観たことのある映画となると、話が盛り上がった。何回かウォッチパーティーをした。
多くの映画や本に触れているからか、多くの知見を持っていた。体調面からあまり外のアクティビティをしてこなかったと言っていたが、自分よりずっと広い世界を知っていた。せめてあの人が見ていた景色に近付きたくて、週1くらいで映画を観る会は続けている。
あの人は夜遅くまで VRChat に居るので、自分もよく夜ふかしをしてのんびりお話したり動画を見たりして過ごしていた。
最後の日、桜の舞うワールドでお別れの会をした。ある人が「さよならだけが人生だ」とだけ書き残していった。調べると唐の漢詩の日本語訳らしい。二度と会えるかも分からない別れにあまりに合う、惜別の詩。
この詩は自分にも深く刺さった。いつか来る別れだけが人生なら、なんと侘しいものなのだろう。別れ以上の思い出が残っているつもりではある。言葉どおりには「さよならだけが人生」なのではないと頭では分かっている。
でもこのように事あるごとに別れを思い出してしまうので、やはりさよならだけが人生なんだ。