日々の仕事をする上で、何かの物事に関して「知っているフリ」と「知らないフリ」のどちらかをよそおうことが、ごくたまにあるかと思います。毎日の煩雑な業務をどうにか円滑に進めていこうとすると、いつでもどこでも誰にでも誠心誠意正直に!というわけにもいきません。前者の「知っているフリ」はボロが出やすいことでよく知られていますが、後者の「知らないフリ」も実は結構気をつけなければいけない事況なのです。
現在、映画(劇場版「名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)」)が大好評上映中です。その「名探偵コナン」のかつて観た映画かテレビ版でこんな場面がありました。変装の名人である真犯人にカマをかけようと、コナン君(だったかな・・・)が「運転免許証の番号は?」という質問を投げかけ、その質問にスラスラと答えた真犯人に対して、「コイツが犯人だ!運転免許証の番号なんて誰も記憶なんかしていない!」と見事に看破するスリリングな佳境があり、だいぶ劫を経ていた筆者も大変関心した思い出があります。なるほどなぁ~と。
政治学者の丸山眞男が座右の銘とした言葉に、「すべてについて何事かを知り、何事かについてはすべてを知る」(J.S.ミル)というものがあります。つまり、「すべてについてすべてを知る」ことはひとり神にのみ可能なことであり、何もかも有限な存在である人間については「すべてについて何事かのトリヴィアルな知識を辛うじて持つことができ、自らの専門の一事についてのみ、一所懸命努力すればすべてを知ることがいつかは可能になるかもね」という意味でしょうか。3.11で「専門家」と称された人々の威信や信頼が地に落ちた今となっては、何とも複雑な気分にもなる言葉でもあります。
コナン君のような名探偵が職場のそこかしこにいるかもしれない、という用心を注意深くしつつ、これからも涼しい顔でなーんにも知らないフリを職場でしていこうと思います。目指せ、故意犯的な狩野英孝さん!