俺は目が良くはない。目が悪いというには周りの人の目が悪くなりすぎている。「朝裸眼で起きたら視界がぼやけてるよ」みたいな人が周りにはいっぱいいる気がする。俺は、電車で席に座った時、ドアの上にある上のモニターは目を凝らせば読める。次に止まる駅がわからないときは目を凝らしながら見る。裸眼で。「あーあんま見えないな」と思うこともあるけど、コンタクトを入れたり、メガネを毎回かけるのは嫌で基本的には裸眼でやり過ごしてきている。
でも、車を運転する時はメガネをかける。夜外でテニスする時もメガネがないとボールが見えにくい。
東京にいる時は美術館なんて滅多に行かない。岡本太郎の展示が上野でやってて行ったけど、趣味は美術館巡りなんて口が裂けても言えないし言わない。
んが、海外旅行に行った時は有名な美術館があれば行く。不思議と国内旅行だと滅多に美術館は行かない。
がしかし、もうそれもいいんじゃないかと少し前に思い始めた。海外の有名な美術館はめちゃでかい。偏見だけど。とにかく歩くし、有名な作品を見たとて、スタンプラリー的な感覚で「あーはいはいこれね。オッケー見れた見れた。やったぜー。あー疲れた。」という感じになっちゃう。たまに心踊る作品に出会ったとて、世界史の資料集とかで見たことあるやつを眼前にしている興奮に過ぎない気がしてしまう。
あと、海外旅行に行く時は大体荷物が重い。なぜかわからないけど、背負って数時間も歩けば座りたい気持ちで満たされる。そんな調子で美術館に行けばスタンプラリーにしかならない。だからもう、無理して美術館に行くのなんてやめようと思った。「有名な美術館に行ったぞ」という自己満足でしかないと思ったから。
この1年で遠出の旅行に行くことが増えた。荷造りをしている時はいつも忘れ物をしている気がして不安だった。とあるpodcastを聴いていて、出張の多いpodcasterは荷物のチェックリストを作っていてそれを毎回使っているらしい。しかも何年も前に作ったもので更新に更新を重ねたものだという。
なんとなく、歴史によって便利なものが作られていくことに魅力を感じて自分も荷物リストを作った。(美術館の話をしておきながら歴史だなんて気が引けるが)
その中に、なんとなくメガネをそのリストに入れた。慣れない街中で乗り換えの電車を探したり、飛行機の案内板を見るには便利だ。荷物は増えるかもしれないけど、「今回の旅行にはメガネはいらんな」と思えば置いて行ってもいい。
リストには小さいカバンもリストに入れた。これは、前回の旅行で重いリュックを背負って何時間も歩くのに嫌気がさしたから。
スペインのマドリードに行った。小さいカバンは絶対に忘れないぞという強い気持ちで荷物に忍び込ませ、メガネは最後になんとなくリュックに入れておいた。
マドリードの空港でメガネは活躍。目が見えると便利。
散々食べ歩きをして何をやろうか考えていたら、スタンプラリーをしておく気持ちになった。有名な美術館があるのだ。とはいえ、前回と同じことをしても後悔することは目に見えている。お金を払って辛い思いなんてしたくない。その美術館は閉館の2時間前に入ると無料で入場できることがわかった。「無料で入っても面白いと思わなければマジで金輪際いく必要ないな」そんな気持ちで重い荷物はホテルに置いて、小さいカバンで閉館の1時間半前に到着した。
入場するといろんな入り口があって見えにくい。そんな時のために持ってきたメガネをかける。そのまま展示のある部屋に入る。
「え、上手くね?」
絵を見て最初に感じたのがこれだった。大概は「でけ〜」「見たことあるやつだ〜」「筋肉すげ〜」みたいなことを思ってるけど、初めての感想だった。メガネをかけているからはっきり見える。
今までお茶漬けサラサラ見ていた時とは違う。上手過ぎて見ちゃうのだ。じっくり見ていると、「これなんか好きだな」とか思ってくる。荷物も軽いからその場にいてもいい気になって、wikipediaで画家と絵について見てみる。マジで絵を見るだけではわからない歴史や背景もわかってなんとなく楽しくなる。
この、なんとなく楽しくなる気持ちを美術館で持ててすごく楽しかった。
バカみたいだけど。
めちゃ広いので1時間半では当然回りきれない。気になる画家のwikipedeiaを見て、同じ画家の絵を探して見てれば尚更。
今は、お金を払って同じ美術館に行くか、もう一度無料の時間に行ってみようか迷っている。限られた滞在期間で2回行っても後悔する気もするが。
周りの人が何か好きなものの展示に行くのはなんかカッコいいし(そう思うこと自体がダサいけど)、好きなものを体験しに行けること自体が羨ましかった。前々から自分は芸術を解する能力がないと思ってた。し、諦めてた。絵を見ても「でけ〜」「見たことあるやつだ〜」「筋肉すげ〜」くらいしか思わないし。でも、知りたいと思って知ってみるともう少し興味が持てた。もはや解する能力が欲しいとは思わないし、そんなものない気もしてくるけど、今まで楽しめそうもないと思っていたことを、少しでも楽しめたこと自体に興奮する体験だった。週末展示に出かける人はどんな気持ちで行っているのかしら。構え過ぎている気もしてくる。
※wikipediaで画家を調べるにあたって※
大体日本語で画家の名前を検索するのは難しい。外国語をカタカナにしなきゃ行けないから。
そんな時は普通にそのままのスペルでググる。
で、wikipediaの言語を変更して日本語のページを開くと良い。
こんな感じで”文A”のボタンをクリックすると言語を選べる。
めちゃ有名な画家とかなら日本語でも大概の情報は出てくる。が、作品の詳細やそこまで有名ではない画家になると日本語のページでは情報が極端に少ないか、そもそも日本語のページ自体が存在しない。
そんな時は、英語のページかとある言語のページをGoogle Chromeの機能を使って翻訳してしまえばいい。翻訳自体の怪しさはあるけれど、意味はわかる。
上から、英語、日本語、スペイン語の『着衣のマヤ』という作品のページだ。日本語がやっぱ情報量に欠けるのがわかるかと思う。
こんなことしていれば1時間半では回り切れるわけないわな。