サイズの合わない箱にギュッと押し込められているみたいだ。酸素が薄くてうまく息ができない。私はどうしてこんなところにいるんだろう。ときどき思い出したように湧いた疑問がジンジャーエールの泡のようにシュワシュワとわずかな音を立てて水中を登っていく。たかだか一個の泡の音なんてよく耳を澄まさないと聞こえない。声はいつもそうやって消える。消えていった。今までずっとそうだった。
いろんな言葉が小石みたいに私の体にぶつかって跳ね返って地面に落ちる。痛いよ、と抗議してもヘラヘラして「ごめん」と返事がある。それは謝罪ではない。ただの言葉だ。
ご・め・ん
健康管理、物価高と税金の間に挟まれた赤が見えた家計のやりくり、学校と学童保育と習い事からくる通知をスワイプ、「今日のごはん何?」から始まる終わりのないボールを打ち返す。
洗濯の山を、茶碗の山をくずし、腐ったおかずをゴミ箱にダンクする。
家庭経営における無限リピートのタスクと付随する各種責任がのしかかって私はいつか、今か明日か明後日か、ともかくいつか、潰れるんだろう。マリオのドッスンに踏み潰される。ゲームと違って私は復活しない。血や内臓が飛び出して、おまえはわかっていたくせに、びっくりしたという顔の後に眉を顰めてあとずさる。ぴかぴかに磨いた靴に汚物がつかないように飛び退く。
あ・り・が・と・う
って言えばいいと思ってるんだろ、スッカスカの免罪符的感謝で。
そのお礼をいうのは、私にじゃなくて、「ツマ」とか「ハハ」とかマッキーで書き殴った箱にだよね。誰もやりたくない汚れ役をありがとう。ところでそれって私である理由はある?
窒息死と圧死はどっちがマシだって、指差してどちらにしようかな、をしている。
あーあ、この頑丈な箱をぶっ壊して、ぶっ壊したら、肺をふくらませて思い切り息を吸いたい。私にはカナヅチが必要だ。
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