女の子は四歳になると本丸での生活を始めました。身の回りのことは家臣である始まりの一振りを始めとした刀剣男士たちが行います。彼女は大事な大事な審神者様でしたので。
審神者様はすくすくと健やかに育ち、恋をしました。
彼女の家臣である男士たちのうちの一振りです。
こんなことはよくない、権力の乱用だ、と健やかに育った彼女は思い、この恋は胸の内に秘めたままにするつもりでした。しかし彼女を育てたのはこの本丸の男士たちです。そんな思いはすぐにばれてしまい、本丸中に祝福されながら一人と一振りは恋仲となりました。
戦の最中とはいえ穏やかな日々が数年続き、時の政府から通知が来ます。
曰く、子を成し次世代の審神者を育成せよ、と。
彼女は悩み、まず始まりの一振りに相談しました。それから初めて喚んだ一振りに相談しました。そうして恋仲の一振りに相談し、出した結論は一人と一振りで夫婦となることでした。
とんとん拍子に進みました。婚姻の儀、初夜。審神者と男士の交わりは、妊娠期間を経ずに子宝がそこにありました。慣れない母親業、父親業を本丸の男士たちから見守られながら四年。その子は審神者となりどこかの本丸へと行くこととなりました。
家族の記憶などない審神者様でしたが、この四年間の温かな家庭を愛おしく、そして手放すことを寂しく思いました。
そしてそれは彼女を育てた本丸の男士たちにももちろん伝わっていました。当然、夫である男士にも。
夫である男士はもう一人子を成さないか、と提案しました。
審神者様は頷きました。
その本丸は四年おきに何人もの審神者を輩出しました。政府は喜ばしかったことでしょう。兵隊は多い方がいいのでしょうから。
ある年を境に、その本丸との通信が途絶えてしまいました。
戦績は申し分ない本丸でしたので、政府から調査員が派遣されました。
彼らが見たものは血塗れの布団の上の腐乱死体。散らばるいくばくかの資材。見た彼らにはすぐに合点がいきましたので速やかに本部へ戻り、報告書が作成されました。
「衰えた霊力で刀剣男士の顕現が保てず、不幸なことに行為の際に中から審神者を切り裂いてしまったと推測されます。やはり刀剣男士との婚姻は禁じるべきだと思われます」
報告書は政府本部内で形式的に回覧され、参照されることなく書庫に仕舞われました。