黄色い花

イチコ
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意識せずにいると、いつも黄色い花を買ってしまう。

チューリップにカーネーション、向日葵、スプレーバラ。フラワーショップの店先には春夏秋冬とりどりの色に溢れていて、花の名前に明るくない私はいつも圧倒されながら店員さんに予算を伝えて ー これとこれ、それからこの花を自宅用に ー と、家に戻って花瓶を用意したところでようやく、今回も黄色を選んでしまったことに気が付く。

好きな色を問われたら、おそらく黄色という答えは出てこない。ぐるりと部屋を見回しても黄色の雑貨は置いていないし、食器もない。服は一着もないような気がする。バッグに帽子、アクセサリー、ハンカチの一枚に至るまで、イエローの色味は私の生活の相棒にはなっていない。

なのに、黄色い花を手に取ってしまう。

折に触れて部屋に花を飾るようになったのは、コロナ禍で息の詰まるような暮らしを強いられている頃だった。外出もままならぬ中、文字通り生活を彩るような……救いと言っては大袈裟だけれども、“それでも花は咲く”という言葉を呟きながら花を見つめていた。

少し時が流れた今は、毎月同じ日に花を買っている。今月はスイートピーとサンダーソニア。部屋の隅に飾れば、鮮やかな黄色はそこだけ光が灯ったよう。

さあ、春が来るよ。

@ichi_ko15
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