ゲゲゲが来たりて

イチコ
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映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」

早々に鑑賞した友人からSNSで“迅速に見にいって”とのリプライを受けたので、公開2週間目くらいに行ってきた。普段映画館に足を運ばないので、私にとってはこれでも早い。ちょうど特典が切れていた時期で残念だった。

PG12というほど残酷だったかな?と思ったけれども、確かに流血の量は多かったかな。あとは煙草の表現も理由だろうか。時代を考えると喫煙者の多さは当然として、これだけ盛大にふかしまくっている絵面は最近の作品ではなかなか見ない気がする。

内容は確かに面白かった。鬼太郎出生の経緯については原作を読んで知っていたけれども、それをよくここまで膨らませたと思う。

私は“次の世代に託す”物語に弱いもので、彼が命を賭す理由が胸を打った。未来というたくさんの可能性に想いを繋ぐ話が好き。彼ら夢見た明日がくるよ。

全体に想像していたほどおどろおどろしくはなく、アクション多めで王道アニメーション映画の要素も多かったように思う。人気の理由としては、生命のやり取りをする局面で共闘するバディものなんて、そりゃみんな好きだよね、という納得。

そして改めて、横溝正史の偉大さを思った。

鑑賞前に横溝が好きな人向けと言われているのを見聞きして、実際見たらなるほどと感じた。そして私も友人に横溝っぽい映画だったよ、と感想を伝えた。

単に似ているとか影響を受けているとか、そういうニュアンスとは少し違って。

閉鎖的な村社会の不気味さ、血族の醜い跡目争い、倫理感を逸脱した暗い秘密。深緑の鬱蒼とした林、薄鼠色のどんよりとした空に、じんわりと肌に纏わりつくような湿度の高い空気。

それに対して条件反射で、横溝正史、という名前が出てくるのがすごい。

時代をあけずに映像化が繰り返され、その度に多くの人にあの世界観が擦り込まれていく。すると、 ー 横溝正史っぽかったよ。の一言で、みなが近似の絵を思い描くことができる。

すごい。

しかし私が横溝作品を読み漁ったのは高校生の時だったから、もう忘れてる部分が多いなあ。当時の印象で一番は獄門島ということにしているけど、いま読み返したらまた違った印象になるかもしれないな。

八つ墓村に犬神家、本陣女王蜂手毬唄、悪魔が来りて夜歩く。

そしてまた積み本リストが増えていくのでした、という話です。

@ichi_ko15
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