前年にレ・ミゼラブルと今拓哉さんに出会った私が上京して、さあお芝居観るぞ、と意気込んでいた年に上演されたのが、東宝版のエリザベートだった。
私の舞台観劇のスタート地点と彼のデビューがほぼ同時期なことと、年齢的な近しさも相まって、井上芳雄という人にはファンとか好きという立ち位置とは少し違う、不思議な感情を抱いている。
ミュージカル界のフロントランナーに対して適切な表現ではないことは承知で。ずっと隣を歩いているような気がしている。
興味深い演目に出演していたから、観劇に行った。演劇雑誌を買えば、どこかに記事があった。たくさんのファンがいたから、方々で活動や感想を見聞きした。私が演劇について思いを寄せてる時、そこに井上芳雄という役者さんの気配が絶えることはなかった。
長くお芝居を見ている中で私自身は熱意の波が揺れて、劇場に足が向かなくなりがちだった年もあるのだけれど、その時期に、“とりあえず井上芳雄(とレ・ミゼラブル)を観ておけばミュージカルの世界と繋がっていられるかな”という理由で観劇を決めたことがある。そういう存在。
昨年の夏のムーラン・ルージュで数年ぶりに帝国劇場に行った時、舞台の真ん中に彼が立っていたことが嬉しかった。私が観劇から離れていたあいだも、変わらずここに居続けてくれたことに、
ただいま、って思った。
そんな心の中での呼びかけに、
おかえりなさい、と笑って応えてくれた気がした。
元祖プリンスさま。……本家だったかな。離れていても遠くても、隣を歩いていてくれてありがとう。どうかこれからもずっと、よろしくお願いいたします。