推し ー 他の人にすすめること。また俗に、人にすすめたいほど気に入っている人や物。(デジタル大字泉)
私が舞台演劇を観始めた頃は、みんな、好きな役者さんのことを贔屓と言っていた。歌舞伎の贔屓筋から派生した言葉に違いないけれども、特段なにかの支援、後援といった行動の裏付けがなくても、“好意” “ファン” “応援”程度のニュアンスで使っていた気がする。
今は推しという言葉の方が一般的なので私もSNSではこちらを使うけど、なんとなく収まりが悪い。これは言葉に慣れていないという理由以上に、自分があまり発信者としてアクティブではないので、“人に勧めたい”という欲求が乏しいのが原因ではないかと思う。
よくある、お勧めの本や面白い舞台があったら教えて、という問いが苦手。それらはあくまでも私の好みに合致したコンテテンツでしかないので、尋ねてきたあなたの趣味に合うかどうかはわかりませんよ、と思うし、何より合わなかったらがっかりじゃない ー お互いに。
だから感想を書く時も、できる限り“私にとっては〇〇でしたよ”という気持ちを詰め込みたい。(そのためSNS上ではよく ※個人の感想です という語句を使ってしまうのだけれども、逃げ口上のようであまり好きな言い回しではない。なんとかしたいと常々思いつつ、いい代替が思い浮かばない)
ゆえに、好きな役者さんについても、“推し”というよりも“贔屓”の方が文字面がしっくりくるのです。広く世界に向かってお勧めするような気概はなくて、ここはひとつ、
“ファンの贔屓目フィルターを通して、とても素敵に見えている人”
くらいのニュアンスでお願いします。