ソウは、始めたことをやめられない。
「切りがいい」を知らない男の子。
以前、あまりにもやめないものだから、親は彼のパソコンを無理矢理取り上げた。
ソウは、唸りながら右頬を痙攣させ、自身の膝に噛みつき、さらに自身の人差し指の関節の外側も噛んだ。
ボク野獣だろ? と、言わんばかりに。
家に1人で居る時のソウは、 寂しすぎて部屋に飾っている戦隊ヒーローのフィギュアを全て解体し、パーツを床にばら撒いた。
顔やら腕やらが転がって、まるでバラバラ殺人事件。
自分の孤独を親に見せつけるため。
(踏んだら痛いのだよ!)
その丁寧な解体作業の途中、我に返ることは無かったのか?
終業式のソウは、 学期末の大荷物を落として歩いた。
アゴは前に出、肩を落とし背中は丸く、ふらふらと歩く。
とにかく全ての気力を失ったことを表現する天才。
持っている荷物は全部落とした。
習字道具、絵の具、上履き、水筒、体操着、エプロンセット……
ランドセルも。
投げるのではなく、数メートルおきに、
ぽとぽと落として歩くのだ。
全部の荷物が無くなったら、帽子を脱ぎ、上着を脱ぎ、靴を脱いだ。
まるで脱皮しているよう。
全部脱ぎ捨てたら羽ばたくんじゃないかな?
(彼の肩甲骨は、身体に対してとても立派。まさしく羽が生えているよう!)
身軽になった彼の帰宅を出迎えた親、
泣く泣く彼の歩いてきた道を戻らねばならなくなる。
荷物を回収するために。
だが、ソウは優しい子だ。
ひとを殴るなんて考えたことすら無いし、
猫を見つけたらお辞儀して
怯えさせないように低い姿勢でそーっと離れて歩く。
たまに、敵意をあらわに強く出てくる猫もいる。
そんな時は「ごめんなさいね」と、走り去る。