扇子を年中持ち歩いている。つまり年中失くす機会があり、年中買い直す羽目になっている。その度に毎度定番の老舗の購入履歴から買い直している。つまり僕は良い扇子しか知らなかったわけだが、最近その老舗ではないところの京扇子を買う機会があった。値段自体が安いのもあったのだが、冬らしい柄というニーズにあっていたため選んだのだが、存外に期待外れだった。何が違うのか、何が扇子をいい扇子たらしめているのか少しまとめようと思う。
簡便のため、各部位の名称の一覧を上に置いておく。ちなみに引用元の白竹堂こそ僕がカモられている老舗である。扇子にAirTagでもつけて売ってくれたらこんなことにはなっていない。
扇子の価格帯は一定の品質を超えると後はそれぞれの素材にどれほどこだわられているのかに依存する。たとえば漆や金で装飾されていたり、扇面の絵が手描きであったり、親骨や仲骨に彫りによる加工が行われていたりといった具合である。紙や竹の素材にもランクがあり、高級なものでは人間国宝による和紙が使われていたりする。
これらの中で機能性に大きく影響するのが竹の素材である。扇子に用いられる竹は外皮を用いる上質竹と、身を用いる並質竹とに大別される。上質竹は強度があり薄くすることができるほか、薄いためにツヤ出しも可能である。並質竹は柔らかいため部材を厚くする必要がある。
そしてこの違いは扇子の質に大きく影響する。仲骨の素材が厚くなる並質竹ではどうしても骨数を減らした扇子になってしまうし、逆に上質竹では骨数の多い扇子を作ることができる。
骨数の少ない扇子では開閉が滑らかにいかない。この違いはさながらbit数の違う音源を聴き比べているかのようだ。デジタルとアナログ程度の違いすらあるかもしれない。また、薄く硬い扇子は扇いでもしなりにくい。一方で並質竹は容易にしなってしまう。同じ力で扇いでも、感じられる風はまるで違う。これも一目瞭然だろう。
これまで安い扇子に触れる機会がなかったため違いもわからなかったが、この違いは扇子の機能性をまるで別次元のものにしてしまうものだ。扇子を装飾品として見ているのならなんでも良いが、機能美に魅入られて買うのなら、良いものを買うべきだ。ブランド品が好きすぎるきらいのある僕なので、こういう風に、高いものが何が違いどう良いのかをつらつらと書くのも趣味にあっている。たまに続けるのも悪くない。次回はスラックスの仕立てでユニクロとハイブランドで何が違うのかでも書こうかと思う。