僕は、とりあえず仮説を作ることが好きだ。仮説の成否はどちらでも良い。何をするにしても、仮説をでっち上げて物事に取り組む癖がある。
15年以上前の話だが、犬を飼うことになった。そのときに、犬とこれから関係を築く上で「犬が尻尾を振った回数」をKPIにした。犬の尻尾は感情を表現する有効な手段のひとつである(ミニチュア・シュナウザーだったので尻尾めっちゃ短かったけど)犬が多くの感情を表現できる環境こそ、犬にとって良い環境に違いないと仮説を立て、それが飼い主に出来ることではないかと考えた。
何をしたか?散歩はもちろんだが、まずはおやつを小さくし、おやつの数を増やし、小さなおやつを部屋中に隠すことにした。少し匂いがするお菓子をタオルケットに入れて、軽めに縛って、隠した。隠し場所は10箇所ぐらいあって、犬は20分ぐらい毎日探すことになった。結果はどうだったのかというと、まず、家にめっちゃ虫がでるようになってしまった。色んなところで匂いのするお菓子を隠したので、虫がでる。僕は虫に友愛の感情があるわけでもないので闖入者の登場に困惑したが、KPIは最優先項目である。虫が出ようとGOである。(虫を出ないようにすることは別途考えればよろしい)毎回10分ぐらい掛けて、おやつを隠した。隠し方もさまざまで、犬と僕の知恵比べを毎日していた。さすがにこれは見つけられないだろう?という場所に隠しても、さすがである。絶対に見つけられる。犬、嗅覚いいのよ。
僕と犬にとって、良かったことを言おう。まず僕が彼女(犬)の性格を掴めたことにある。お菓子探しゲームを通じて、彼女の虫が出たときの臆病な表情や、おやつが絶対にとれないところ(例えば冷蔵庫の裏とか)に入ったときでも諦めない性格、彼女は暇だったらおやつを見逃した可能性を求めて、家中をたびにでる探究心だとか(もちろん無い)、おやつKPIで色んな彼女の姿を見れたのは飼い主としての喜びであった。
犬視点で良かったことはなんだろう。彼女にユーザーインタビューが出来なくて分からないし、N1なので正しいかの証明も出来ない。ただ彼女が年老いても「子犬?」と間違われるぐらい彼女は活発だった。あと毎日のタオルケットからのおやつ捜索で、筋肉がムキムキになった。小型犬なのにムキムキでアニメ犬みたいな様相で少しイカツかったけど、活発ではあった。少し野生の性質に戻るというか、機敏さとか騒がしさが強くなったので、良かったのか分からないが、毎日が活き活きとしていたように思う。
もちろんKPIは設定してからも振り返りが大事で、話を単純化したが、以外にいろんな取り組みをしてきて、尻尾振り最大化に取り組んだ。
犬を飼われる人がいれば、仮説を考えることから始めるのをオススメしたい。豊かな関係づくりにとって、犬にとって何が良い環境なのか?を考えてみる。猫なら自由になりたいはずの仮説から、自由さKPI。亀なら甲羅干しのときに幸せそうなので、日光浴KPIを設計するのではないかと思う。動物とはノンバーバルコミュニケーションだからこそ、こちらがいかに相手の行動をみながら仮説を修正する。これが出来たら人とのコミュニケーションも円滑になるはずだ(たぶん)