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書籍情報
書籍名|生成AIで世界はこう変わる
著者|今井翔太
ISBN|978-4-8156-2297-8
発売日|2024/1/7
ページ数|256
購入した動機
どのポストかは忘れたけれども、X(旧Twitter)で紹介するポストを先月頭に見かけたので衝動的に予約しました。
内容と感想
第1章 「生成AI革命」という歴史の転換点――生成AIは人類の脅威か? 救世主か?
本書の導入となる章です。ChatGPTを皮切りにMidjourneyなどの生成AIについて簡潔に説明されています。生成したイラストやChatGPT-4Vの利用が画像付きで紹介されています。また、現在の生成AIの先にある展望などが紹介されています。
第2章 生成AIの背後にある技術――塗り替わるテクノロジーの現在地とは?
生成AIが誕生するまでの人工知能研究の簡潔な説明(ニューラルネットワーク、ディープラーニング)と生成AIが用いている技術やなぜ今までのAIよりも優れているのか。文章生成や画像生成がどのような仕組みで動いているのかの概念的な説明がされている章です。
過去に機械学習が話題になった際に、ある程度の概念は理解していたこともあり、この章で躓くことはありませんでした。ただ、今までAIとその関連技術に触れてこなかった人には少し難しいかもしれません。現在の生成AIが過去の機械学習で利用されていた技術の発展系であることもあり、今までなんとなくで理解していた原理について、体系立てて理解することができました。言語モデルのパラメタ数が増加すると突然能力が上がる『能力創発』はかなりキーとなる現象で興味深かったです。
第3章 AIによって消える仕事・残る仕事――生成AIを労働の味方にするには?
かなりキャッチーなタイトルですが、よく見かける煽り文のように「この仕事は危ない!」というような内容の章ではありません。生成AIと親和性の高い仕事(主にホワイトカラー)と生成AIとどのように付き合っていくのかについて書かれている章です。生成AIが実際のしごとに活用されている事例やどのような恩恵があるのかが紹介されています。
自分も業務でGitHub Copilotを利用して結構長い時間が立っており、生成AIを利用して仕事をするのが当たり前となっています。ただ、どのくらい業務が効率化したかを実感するのは難しいなと思っていたので、客観的なデータを示してもらったことで、Copilotでどのような恩恵を受けているか考え直す機会になりました。
第4章 AIが問い直す「創作」の価値――生成AIは創作ツールか? 創作者か?
Xでも度々話題になる、AIでの創作に関する章です。現在の生成AIが有している創作能力とそれに伴う問題点に関して書かれています。高品質な成果を瞬時に生成AIが創作できることによって、「人間が作った」ことに価値があるといった価値観が台頭したきたことにも触れられています。
個人的には、人間が作ったかAIが作ったかはあまり気にしてはいないです。それを見て自分がどのように感じたかのほうを重視してるつもりです。また、「人間が作った」ことに価値があるという価値観自体は、あまり本質的ではないと思っています。生成AIの成果物が高度になればなるほど、人間が作ったものとAIが作ったものの区別は難しく、結局はクリエイターの申告に頼らざるを得なくなると思うからです。
第5章 生成AIとともに歩む人類の未来――「人類の言語の獲得」以来の革命になるか?
中長期的に生成AIが発展する中で、どのような未来が予想されるのかについて書かれている章です。現在の生成AIがもたらしている影響の発展形としての未来予測となっています。
この章で予想されている未来については、中期的な未来についてはかなり納得感があります。例えば「皆が生成AIに頼ることにより、情報発信者と受信者の関係が希薄になる」については、感覚的に少しずつ進行している様に思えました。一方で長期的な視点に関しては、参考程度に考えています。生成AIが浸透する以前は、現在の状況は全く予想しておらず、未来がガラッと変わったように感じているからです。(自分の見ている方向が見当違いだっただけかもしれませんが)
まとめ
本書は、生成AIをある程度触っているが、その仕組みを知るのはハードルが高いなと思っていたり、いまいち使いこなせていないなと感じる人の入門書として最適な書籍だと思います。新書なのでお財布に優しくお手に取りやすいと思います。誰かの参考になれば幸いです。