幸運なことに (かどうかは判定を留保してもよい気がするが、まあとにかく) 、私にはマッチングアプリの適性がまあまああるようである。適性と言っても1日に10人20人とマッチングしてモテまくりというわけではもちろんなく、ツイッター・露悪でしばしば見るようなものと比較して、ぐらいの程度だ。ちょっとはマッチングする、そのぐらい。
当たり前と言えば当たり前だが、いいねは無差別に飛ばすよりも戦略に沿って投げたほうがよい。とりわけ私のように考えることを好んでいるならば、同様に考えることを好んでいそうなひとでなければ「思想つよ」などと思われておしまいになることだろう。こちらの努力でなんとかできる障壁は、こちらが努力すべきだ。
なお、公正のため使用環境と方法は一応明記しておく。使用しているマッチングアプリは with であり、with では趣味などをタグ形式で登録できる機能がかなり全面に押し出されている。従って、この機能によって層を予め狭めることができた。主として使用したタグは「哲学」「積読家」「学ぶのが好き」の3つだが、今日になってそういえば理系タグが無いわけ無いなと思われたのでそっちでも見てみたところ同様に好ましくなったような感がある。
何度も示している通り、私が求めているのは同盟者である。そして同盟者とは、厳密なことを言えば恋人ではない。恋愛感情の介在は不要であるし、もし必要ならば私にはそもそも不可能であるように思われる。これが恋人っぽい見た目を要するのは純粋に社会的要求であり、人生の伴侶かつ私が同性愛者ではないために「普通」を覆す気力がない、というところに求められる。閑話休題、では同盟者とは一体全体何なのかと言うと、これは主観的回答であるが、私の精神の役に立つ他者のことだと言ってよろしい。
言ってよろしいのだ。この点は確かだ。無論ながら、相手にとって私が何らかの形で好ましいものでなければ関係は持続可能でない。持続可能でない関係は、自明なこととして、恋愛や結婚の文脈の上には載せられない。だが、それはそれとして、持続可能であるものの役立ち度の低い関係が存在し、これを私はやや恐れている。
人対人関係、特に排他的関係は、組むのもハイコストなら解消するのもハイコストだ。互いに互いをぜんぜん役に立たないと思っていれば話は早いが、「すごく嬉しいってわけでもないけどまあ満足しても良いな」ぐらいにあるとき、解消は不条理にすらなりうる。満足しているからだ。そのような満足を想定したとき、私が独り身であるときの自己拡大よりもずっと低いところに沈んでいくように思われてならない。これでは同盟関係とは言い難く、確かに運命共同体ではあるものの、共に分割されるポーランドとリトアニアになってしまっている。
ところで、私には一定程度の社会性がある。この社会性は、ひとの幸福を阻碍せず、また可能ならば幸福の増大を企図することを旨とする。主として会話を通してこれは達成される。いままで結構多くのひとにこのことは上手だと評価されており、その中には昔にマチアプを通して会ってくれたひともいる。そして、このプロセスは私がコストを供出して、私の意図にあまり影響されず実行される。
これが意味するところは何か。いい感じに「友人として好ましい」ような状態を形成することができる。では、これを排他的関係にも持ち込むとどうなるだろうか？ コストはいや増すだろう。まあそれ自体は大した問題でもない。問題は、コストが増してもそれ相応の利益を回収できない場合である。そのことについては上述した。
して、ひとから利益を回収するにはどうしたらよいだろうか。この利益とはもちろん金銭的利益ではなく、上述の通りの精神的利益である。であれば、「こうであるから協力を求む」と直接伝えるということができるように見える。つまりだ、「私が価値を置くのはこのあたりだ。貴方はこの領域にコストを支払うことができるか？」と問えばよい。
具体的には知的マッチョイズムの要請である。私は遠い星々をも明日には掴み落としてやるとぞ意気込んで倦むところ無い知的冒険者として間断なき自己拡張に日々望んでいる、と自認している。流石に美化を含む。そうであっても、私の理想的なあり方はそのようなところだ。だから、相手にもそのようであってほしい。
全く同じ価値観は持たずとも、必須の要件は何だろうかと考えることはできるだろう。それは星々を眼差すことだ。そして、手を伸ばすことを日常とする/していることだ。間断なき自己拡張はケの日に行われなければならない。そうでなければ、今そのように感じているように、私は孤独を覚えることだろうと思う。
改めて見てもものすごい知的マッチョイズムの負荷要求だ。しかしそうでないなら1人のほうがお得になってしまうのだから仕方ない。このような指針で行こうと思う。