学園アイドルマスターというコンテンツがある。正確に言えば、まだギリ無いか、いままさに出来上がるところだ。ソシャゲ媒体がメインコンテンツらしく、そのリリース日を「今年の春」と言っていたのに今日になってようやく発表した寝坊助だ。来週の木曜らしい。
学園アイドルマスターと言うからには、アイドルマスターの系列のやつだ。系列と言っても別に何か本質的つながりがあるわけでもなし (稀に公式側でクロスオーバーをやる程度なのでリリース前コンテンツには本当に関係がない) 、過去のアイドルマスターとは関係の無い新しいタイトルだとみなしていくのが素直だと思う。
で、ここ数年の私はソシャゲという形態そのものに無理を感じていて、近年はソシャゲ以外でほぼ展開を持ってくれないアイマスというものからも離れていた。なので学マスも触れないつもりでいた。というか、触れる気力が生じる道理が無いだろう、というところだった。ではなぜこの話を今しているのかと言えば、それは強烈な天ク美がいたからだ。ご存知の通り、天ク美こと天才クール美少女は私が最も熱を上げているキャラ属性なので、それをお出しされたからにはとりあえず食いつかざるを得ない。釣り針はしっかり頬にぶっ刺した。
その天ク美は、名前を篠澤広と言う。アイマスは初代以外ソロ曲1曲目がだいたい自己言及のキャラソンなので、もしキャラが気になった場合はそれを聞いてみてほしい。概ね私の解釈もそこに発している。ソロ曲『光景』のMVはこちら。
まだリリース前なので大した情報源も無いのだが、少なくともこのMVの解釈や他の僅かな情報源から察するに、篠澤広は極めて私に近い精神性を持っていると言ってしまって良いと思う、と今の私は感じている。順を追って以下にそれを説明しよう。もしこの解釈がリリース後も妥当なのであれば、この記事は私が予言を的中させたものになるはずだ。そうなったら面白いので、ここにそれを記述しておく。外れたら外れたで知らない精神性を発見することは概ね面白いが。
さて、まず、私が篠澤広のことを天ク美だと判断したのは、そもそも紹介文がそう言っていたからだ。曰く、
ミステリアスな雰囲気漂う天才少女。簡単で退屈すぎる日々を厭い、苦手分野に挑戦すべく初星学園に入学した。「辛く苦しいレッスン」や「うまくいかないこと」に喜びを感じる変人。アイドルを目指した理由は「いちばんわたしに向いてなさそうだから」。
とのこと。ミステリアスというのはつまりクールだ。その上見てくれもクール系の文脈だ。で、「天才少女」だ。ということは天ク美だ。
ここにおいて、私は篠澤広について (共感ベースで) 一貫性のある解釈を提示することができる。紹介文を追っていく形で、一つずつ説明しよう。
「簡単で退屈すぎる日々を厭い」……これはまあよくある厭世天才キャラのそれとみなしてしまっても良い (実際枕詞だ) し、おそらく彼女が本当にそこまで日常を退屈視するような状況に陥ることも無いと思う。どう考えてもフロンティア精神を持っているし、自分の知らない世界を知った世界に含めるために歩を進めることに躊躇は無さそうだ。だから、たぶん退屈になるよりも先に、道を歩いている。
「苦手分野に挑戦すべく初星学園に入学した」……初星学園とは学マスの舞台だ。ビジュアルを見てもらえればわかるが、彼女は異様に線が細い。フィジカルは無いだろう感じの個人PVもあった。で、「苦手分野に挑戦すべく」、これは上にも言った理由と通底するところだろう、たぶんフィジカルに弱点がある以外はオールラウンダー系の天才っぽそうな描かれ方がしているので (もしかするとあと何個か親近感持たせる系の弱点があるかもわからないが) 、「苦手分野」というのは自らの能力によってさえ簡単には進めない密林めいた分野なのだろう。
で、ここで一つ私の解釈を入れる。篠澤広、彼女は間違いなく (間違いなく!) 世界のうちまだ知らない部分を見、探り、そしてそこに歩みを進めることに喜びを覚えるタイプの人間だ。ある特殊分野の頂へ至る道を見つけ、たぶんここに労力を割けばその頂まで達することができるのだろうな、という目星が付いたらば別の分野に動かないではいられない、そういう人間だ。例外的な分野はあるにせよ (知らない世界、universus incognitus に足を踏み入れることが喜びだとはいえ、それだけが喜びというわけでもないはずだから留まる分野も無いではないはずで、たぶんそれはアイドル業に割り当てられていると思う) 、際限なく自分を拡張し続け、あたらしく改組しつづけることを至上の喜びとしているに違いない、と思う。
この理解の上で、「『辛く苦しいレッスン』や『うまくいかないこと』に喜びを感じる変人。」は極めて簡単に理解される。辛く苦しいレッスンそれ自体ではなく、うまくいかないことそれ自体ではなく、それらが示唆する未知の宇宙へ進む道、すなわち自身の改良による新しい地平の踏破、それこそが喜びを感じる対象なのだ。
それはそうとここに「変人。」と書いたプロモーション担当は燃やすべきかもしれない、雑に「変人」とまとめて疎外してしまうことがムカつくので。
「アイドルを目指した理由は『いちばんわたしに向いてなさそうだから』。」……これはもはや説明不要だと思う。まったく同じことだ!
ソロ曲『光景』のMVは以上の私の主張を傍証していると思うので、ここに付記しておく。
世界の枝分かれしていく要素のひとつひとつを撫で、そこに到達できるからには到達し、そうして進んでいった果てに、手からすっぽ抜けていってしまった輝き――アイドル業がある。アイドル業が輝いて見える理由は、少なくとも、それが困難だから、という部分があるには違いない。ほかに何か彼女を惹きつける理由があるのかもしれないが (思考回路を共有しないひと向けにたぶんなんかある) 、とりあえずはそうやって未知の宇宙を示唆するものであるから熱を持つ、そういうことだと思う。
主観世界の外側を探索するのだから、遮二無二いろいろなものに手を出すはずだ。ばらばらと降ってくる大量の小道具がそれをきっと証明している。将棋の駒、サンドイッチ、バドミントンのシャトル、刷毛、香水瓶、何らかの花、イーゼル、スタバっぽい容器……そういった雑然とした羅列が、そうやって知らないものを探索した結果生まれた、彼女の豊かな知見世界を示している。「広」という名前はそういうことを指しているのかもしれない。
ついでに言えば、彼女はたぶんLv5バッジコレクターだ。上述したが、ある分野についてある程度習熟すれば、たぶんこの道を行けば頂に到れるのだろうというものが見えてくる。それが最初に見えた段階でやる気を失って (このあたりで急速に時間あたりの知見が減って情報的面白さが減ってくるのだ) 、別の分野に移っていく。そういうのを指して「Lv5に到達した時点でやめる」、Lv5バッジコレクター、と呼んでいる。彼女はきっとこれだ。
そして、彼女は自らを変形することに躊躇がない――当然といえば当然だ、自らの世界を押し広げて新たな地形の光景を眼に捉えようというとき、自らの世界をかちかちに固めたままで過ごす、すなわち自己同一性をごく守ろうという観念はあまりにも相容れない。知らないものを取り込んで、踏み入れて、そうしてぐねぐねと変形し、また歩く。Aメロと間奏での変形はそういうことだろう。
以上が2024/05/08現在での私の篠澤広解釈だ。この解釈は多分に私自身の内省を含んでいるので、きっと多分に誤った部分があるに違いない――そうでなければ、自らをして篠澤広だと主張する限界オタクになってしまう。だって、あまりにも共感が得られてしまうから。
篠澤広への共感があると同時に、篠澤広を作った人間がいる、すなわちこの思考回路をわかっている人間がいる、ということにもやや感動を覚える節があるが、主題ではないのでそれはこのへんにしておく。
答え合わせは、早くとも学マスがリリースしてからになるだろう。私の解釈と学マス公式で篠澤広バトルだ。対戦よろしくお願いします。