私の創作erとしての主戦場は文字だ。文字書きというものはすごーく敷居の低いものだと思う。紙とペンがあればできるのだし、パソコンを使ったとしてもテキストエディタなんてものはこの世にごまんとある。なんなら Windows にはデフォルトでテキストエディタが付随しているし、大抵の場合、お金を使っても Word 程度が関の山だ。お金がかかる余地はほとんどない。お金が儲かる余地もあんまりないが、趣味でやっている限りにおいて、これはほとんど問題ない。とても気楽なものだ。
その一方で、文字媒体では手の届かない表現というものもある。当然ながら、それぞれの媒体に適したものというものがあって、文字媒体は特に時間感覚の無視が簡単にできるところが優れている。一年も、百年も、百万年も、一恒河沙年だって、紙の上では一行で流せる。
逆に、主観的時間感覚に強く寄り添った媒体というもの、それこそが音声作品だ。音声というものが時間によく絡みついているので、声音、間、そういったもので、文字とは違う方向から感情を直接触ることができる。ぜひ、この媒体を使った表現をやりたい。前々から思っていたが、今日になって「作りたいな……」という気持ちがかなり強くなってきた。
媒体における差とは相反して、創作erの目線からすると、文字媒体と音声媒体は似通ってすらいる。文字媒体を書くのは私で、音声媒体のシナリオを書くのも私だ。読み上げてもらったりパケ絵を描いてもらったりするのは別個あるが、まあともかく、私が得意とする分野でできることがある。そのことがなお一層私の気持ちを強めているかもしれない。
さて、シナリオ以外の部分は私にはできない。ということはひとに依頼する必要がある。依頼するということは、通常お金を出してその対価として成果物を得る、ということを指す。これの勘所が無かったので調べたら、ちょっとお高いめ……ですね……という感じの感想を得た。さーて、どうしよう。
特に問題となるのは声優さんの選定だ。もちろん、思いっきり事務所に所属してプロでやってます、というひとに読み上げてもらえればそれが一番よい。しかし依頼すると破産だ。どうやら新人声優であっても30円/字ぐらいのギャラは発生するらしく、1時間程度の音声、ざっくり1万字と見積もると、これは30万円になる。とてもではないが、足が出すぎて全身ダメージジーンズみたいになってしまいそうだ。
というわけで、同人声優をやっていらっしゃる方から演技がいい感じだと思ったひとを2人ほど見繕った。備忘録代わりにここに書いておくと、伊ヶ崎綾香さん (7円/字~) と御崎ひよりさん (6円/字~) だ。ギャラはそれぞれ公式ホームページに記載のあったものを引用した。1万字想定で、それぞれ7万円と6万円になる計算だ。
パケ絵代を2万 (やや安めだが勘弁してほしい) 、スタジオ代を3万 (わかっていないが伊ヶ崎綾香さんの公式ページに6000円/1h と記載があったので皮算用) として声優さん以外に5万円かかると想定すると、ざっと12万円ほどかかる計算になる。販売価格は1100円ぐらい (DLSiteでよく見る価格帯) としてやると、550円/本が回収できるので、損益分岐点は219本となる。
NSFWなら余裕の本数だ。ただ、全年齢だと躊躇する本数だ。
さて、ここで私の前にはいくつかの問題が広がっていることがわかる。1つ目は、NSFWに逃げるかどうか。そしてもう1つは、そもそも私がNSFW作品を作れるかどうかだ。あといくつかの問題があるが (文字数を狙って作品を収められるのかどうかとか資金とか) 、作品それ自体の本質的な問題は以上2点であとは些事だと思う。
まず1つ目、NSFWに逃げるかどうかだ。DLSiteのNSFW売り場を見るとわかるが、当然のような顔をして販売数4桁がずらずら並んでいる。それであれば、なんとか赤字を出さないどころか余裕で利益が出る。正直これで私の心はだいぶ傾いていて、先立つものが無いことにはどうしようもないし矜持もへったくれも無いだろ……となってしまった。NSFWは本質的に不要だが、サービスっていうやつだ。私の財布への。
で、問題は2つ目だ。そもそも、私はNSFW作品を作ることができるのか? やったことは無い。文字書きならNSFW作品にしたくないからだ。もっと広く世界と関わりあい得る、ジオードの紫水晶のようなキャラクターの心を、わざわざ熱して煙水晶にして出荷する必要はぜんぜん無い。
挑戦してみる価値はあるかもしれない。上述したが、文字媒体と音声媒体では特質がかなり違う。かなり違うのであれば、正当化される方向も異なるに違いない。で、あとは技術的問題だ。
とりあえずやることは決まった。寝て起きて、手を動かそう。1万文字なら大した量じゃないからね。