スタートアップではない、ふつうの会社が自社事業をはじめるときの事業計画の考え方を聞かれたので自分の考えをまとめてみた。
▼前提
主な事業で安定した利益がでている
主な事業とは別で新規事業を立ち上げたい
エクイティ・ファイナンスは検討していない
金融機関からの借入は検討しているが、まずは手元の資金ではじめたい
まず、事業計画にはオフェンスとディフェンスがある。
オフェンス=売上やKPI
ディフェンス=バーンレートやキャッシュフロー
自己資金で新しい事業をはじめるときは、オフェンス1:ディフェンス9ぐらいのバランスで考えたい。
とにかく失敗してもしなない(倒産しない)ことを意識する。そのためには通常の事業計画の他に「ここまでいったらしぬ」という最悪の計画をたてる。
(例)
新規事業につかえる手元資金は1500万円
仕入れやWeb制作などの初期費用に500万円
月々のバーンレートは100万円
月次売上300万円で単月黒字
このようなケースのとき、通常であればたとえば「1年後に月次売上300万を達成したい」といった目標を立ててそこから逆算して事業計画をたてる。
それが現実的に達成できない数値であれば、KPIだったりそもそものビジネスモデルが間違えている可能性が高い。
その計画の確からしさは、未経験の領域であればWeb検索や競合のリサーチはもちろん、有識者から話を聞くなどをして売上とKPI、それにかかる投資コストと見込める利益のロジック精度を高める。
この時点では攻守のバランスは1:2ぐらいで、少し保守的かなという感覚で計画を組む。これが通常のシナリオ。
この通常のシナリオは、往々にしてその通りにならない。
もちろん上ブレすることもあるけど大抵は下ブレする。どちらに転んでも計画通りにはいかない。
上ブレはほっておいていいが下ブレは場合によっては倒産につながる。なのでオフェンス1:ディフェンス9ぐらいの事業計画を必ずつくることをオススメする。
たとえば上記の例に沿って考えれば、売上が0円のままだと10ヶ月で手元資金が尽きる。仮にずっと0円がありえないとしても、半年ぐらいは0円が続いても他事業への影響がないか、追加投資でテコ入れできるかなど、判断する余力が残るようにシナリオを考える。これがディフェンス9の事業計画。
これを最初につくっておくことで「ここまでいったらやばい」というラインを可視化することができる。そのラインと実際のKPIを毎月or毎週モニタリングする。そうすれば事業が取り返しのつかないゾーンに突入するまえにフラグを回収して軌道修正を図ることができる。
通常の事業計画の方はビジネスモデルの確証以外の使い道はあまりないので、日々のモニタリングはしなくてもいい。使うときがあれば融資もらうときの提出資料ぐらいか。
大企業やスタートアップのような資金力がないふつうの会社が、まず一番に考えるべきことは失敗しても潰れないことだと思う。潰れなければ失敗を糧に何度もチャレンジできるし、打席に立ち続ければいつかはヒットがでるはず。
なので、とにかくディフェンス力を高めておく必要がある。
ちなみに自分はモニタリング指標としての想定売上は設定するけど、目標としての売上は最初はつくらない。つくった方がモチベーションがあがるとか、明確なメリットがあるときは別だけど原則としていらないと思う。
過度な売上目標は余計な金銭的・人的コストをかけてしまって、借入が膨らんだりメンバーが疲弊したりリスクが大きい。
一方でうまくいくときは目標数値とか関係なく伸びていくことが多い。
「どういう状態になれば利益がでるか」といった黒字化のロジックさえ担保できていれば、売上目標をたてることにあまり意味はないと思っている。あくまでは「最初は」なので、成長のドライバーが明確になる2年目・3年目は何かしら目標をたてた方がいいけど。
とにかく資金が潤沢にないふつうの会社は死亡フラグを事前に回収することが重要だとおもう。退場しなければそのうちなんとかなる。たぶん