清時代の台湾、いいとこのお嬢さん・潔娘は親戚に「早く結婚しろ」と言われたり、兄嫁が抱いている「男の子を生まないといけない」の強迫観念に息苦しさを感じている。ある日不自然な「溺死」の若い女性の遺体が見つかり、供養の儀式に現れたうつくしい霊媒師の女性に強く惹かれ声をかけーーみたいな話。
起きている事象を考えると民俗学系オカルトホラーサスペンスの色はあるんだけど、同時に事実として起きていることが抑圧!差別!暴力!!なのでゴリゴリに社会派。いま朝ドラ『虎に翼』で無能力とされてきた女性のために法を武器に盾に自ら戦うことにした女性たちの話をやっているけれど、この漫画を読んでいる時に感じたザラザラとした痛い不快な感覚は「不当に扱われる彼女たち」のシーンで感じたものに似ていた、と思う。でも最終的な読了感は爽やかでとても良かった。おすすめです。
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私がうだうだと紹介する前に読んでほしいんだけど、少しだけ語りたい。
「女には出来ないことが悪霊になれば簡単に出来る」という言葉がでてくる。なかったことにされてきた力のないものがほんとうに全部奪われて初めて、力あるものに何かの影響を与えられる(かもしれない)みたいな、こんな悲しくて悔しい話があるかよと思った。
少し前になんでか急に思い立って四谷怪談を読んだが、あれは恐ろしい怨霊の話なんかではなくシンプルにひどい男に振り回された女の話じゃん…と強く感じたので、「女には出来ないことが悪霊になれば…」で私の中のお岩ガールが「そうかもしれんがクソすぎるでしょ」と立ち上がったような気がした。
ホラーや語られる怪異都市伝説の背後には差別とか抑圧とかがあると思う。無意識下に抱える罪悪感を恐怖に変えて自分の罪から目を背けるみたいなシステムがあるでしょう。
本来ならこちらに害を与えてくるとは想定されないものが害してくるから「怖い」わけで、ホラーが時々ある種のカタルシスになってしまうのも、する側/される側の立場や意識の違いが関係するはず。女の立場から見た四谷怪談がホラーになりきれないみたいに。
なんかこういう話をたしか沖田瑞穂『怖い女』あたりで読んだ気がしたのに、いまペラペラめくってて該当箇所が見当たらない。他の本だったか?