東京日記

imdkm
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2月22日

山形発のいいバスがとれなかった都合で仙台朝9時発の昼行高速バスで東京に向かう。母親に仙台駅まで送ってもらったが、折からの寒さと雪で道路状況も悪いし、仙台駅に着いたらびしょびしょの重たい雪と厳しい寒さでこごえあがるし、後部座席で今後の道行に心が折れそうになっていた。

バスのなかで仕事しようかと思ったがそんな体力はなく、朝5時起きの無理もたたってうとうと。雪で遅れるかなと思ったのだが宮城~茨城くらいまでは順調で、むしろ東京入ってからの渋滞で1時間到着が遅れた。

17時ちかく、バスタ新宿に到着するなり、初台へ向かってICCの「坂本龍一トリビュート」展を見に行く。正直肩透かしな内容で、おそらくシアターで行っている映像作品のスクリーニングまでがセットだったのだろう。ICCに入ってから気づいた。

その後、南千住の宿にチェックイン。定宿である。いつもそこに泊まるときにはすぐそばのまいばすけっとで食料や日用品を買っていたのだが、なんと改装工事中で滞在期間はずっと閉まってるらしい。ローソンストア100やちょっと歩いたスーパーに買い出しに行く。

宿の小さなデスクであれこれと作業を行い、明日も早いので、と風呂入って就寝。

2月23日

朝イチで森美術館の「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」を見る。うっすら疲労が残るなか、それなりに面白く見たが、外部キュレーターが担当した第二章だけが見応えあり、その他はまあ、「流行」としてのエコロジー、みたいなもの以上の説得力が薄かった。これは個々の作家に対する批判というよりも、作家が行っていることの背景を補うようなキュレトリアルな配慮がどうも薄いように思った。第二章は高度経済成長期の日本における環境問題(核、公害等々)と同時代の表現の関連性を丁寧に見せるもので、特にドキュメンタリー写真やヴィデオアクティヴィズムの紹介が効いていた。それ以外は、たしかに個々の作品が介入したり表現しようとしている状況は興味深いけど、なかなかかたまりになって見えてこないというか、くくりがふわっとしすぎていた。

昼、Nさんと焼き肉を食べる。その日は油断してよれっよれの格好でふらふら歩いていたのだが、六本木の小洒落た焼肉屋ではちょっとさすがに恥ずかしかった(そもそもそのかっこで人に会うのどうなんだというのはあるが)。まあいろいろと話す。

その後、上野に向い、コワーキングスペースを借りて(はかどり空間ことFEEEPです。いつも使っている)ちょっと作業。夕方からはまた人と会う。

17時ちょい前、Sさんと上野の喫茶店で会う。会う、っていうかまったく知らない初対面の人で、インスタで「この時期東京行くから誰か茶しばきましょ~」と呼びかけたらDMが来たのである。怪しい人だったらどうしよう、と思ったけど多分そんなに変な人ではないはず…… 多分おれのほうが変だし…… と会うことにした。すごい好青年で、in the blue shirtの開催する神保町サウンドシェアに行った話などを聞いた。

その日は宿に戻って終了。

2月24日

明日の美学校の講義、リハやらないと多分発表うまくいかないな、と思って朝からSNSで呼びかけ。それなりに参加者が集まりそうだったので、レンタルスペースをちょっとチェックしておく。

朝イチで東京都現代美術館に向い、豊嶋康子展を見る。コンセプチュアルな表現が社会の制度や慣習に対する介入であると同時に、介入する主体である「私」のあやふやさもあからさまにしてしまう、そんな機序がシンプルでユニークな着想とその実行によってあらわになりつづける30年以上の軌跡。ぱっと見てユーモラスでもあり、ちょうど課外授業で訪れた高校生がうん十人とか来ていたのだが、数人ずつのグループにわかれてわいわいと作品を見ていたのがよかった。三連休の2日目ということで人出も多かったな。

MOTアニュアル2023は、メディアアート系の展示ということでちょっと身構えた(21美のDXP展を思い起こしつつ……)のだが、結構おもしろかった。やんツーさんの重力発電をモチーフにした作品が楽しかったので全部オッケーみたいな感じでもあった。ただ、キュレーション側が「生成と創造の違いとは」みたいなふわっとした質問をして、それにアーティストがふわっとした回答をしているのがキャプションに入っていたのは、正直ないほうがよかったと思う。アーティストから言葉を引き出すんだったら短くてもちゃんとインタビューしたほうがいいよ。

コレクション展も見たけど駆け足になってしまった。

竹橋に移動し、大学時代の後輩とランチを食べる。中華料理を食べながらいろいろ世知辛い話をしたり聞いたり。その後、後輩に展覧会をおごってもらう(後輩にたかる悪い先輩である……)。

東京国立近代美術館で中平卓馬展。うわさにたがわぬ充実した展示で、満足感があった。クロノロジカルな構成で作家の伝記的な歩みを着実に見せつつ、雑誌の誌面やインスタレーションの再現展示など各パートの充実した展示物が中平のドラマチックに還元もできそうなライフヒストリーを相対化するような迫力を持っていた。

急性アルコール中毒による昏倒までの中平の足跡が雑誌などのメディアと(批判的な介入や逸脱をともないつつ)並走していた一方で、復帰後はそうした挑発的な態度からやや距離を置いて、「写真家」というアイデンティティの追求と実践に邁進することになる。一方で、作品自体のもたらす印象は、「以後」のほうがメディア論、イメージ論的な「以前」の中平の言説を彷彿とさせるものがあり、そのあたりの一筋縄ではいかなさが興味深かった。

コレクション展も楽しく見たが、アーティスト・トークの映像と収蔵作品を一緒に見せる企画は地味によかった。その直前の、もの派とコンセプチュアリズムと中平卓馬をいったんラベルを相対化して同時代的につなぐような小さめの部屋もよかった。

リハのために上野に貸し会議室をとっていたので、上野に移動。時間が余ったのと、美術館めぐって疲労困憊していたので快活クラブでCHILLする。あやうく寝落ちしそうになったが、予定していた時間通りに出て、バーガーキングでワッパー食べてから貸し会議室に向かう。

集まってくれた5人を前に、講義の内容をまるっとリハ。2つある発表のうち1つめが、なんと50分の予定が1時間40分かかるという衝撃的な事実が発覚し、大いに焦る。もうひとつはきちんと時間内に収まっていた。まあそのあたりは明日調整しよう……ということで、この日は宿に戻り、就寝。

2月25日

チェックアウト時間ぎりぎりまでゆったりしてから、神保町に向かう。11時少し前に美学校に到着し、スペースを借りてスライドをがつがつ削る。お腹へったので近くのカオマンガイ屋でカオマンガイを食べる。いったいどうなるんだろう? 大丈夫かなぁ? と会場に戻ってセッティング。

内容がニッチというか、狭いというか、逆に広いというか、なんかわかりそうでわからん感じではあり、まー20人とか来たら御の字でしょう、くらいに思っていたら、なんとオンラインも含めて67人が受講してくださり、うれしいやら、「なんでこんな大事に……」と途方に暮れたり、感情が忙しかった。松浦さんとも初対面(オンラインで打ち合わせはしていた)で、うまくホストできるのか??? と不安ばかりが募っていた。

まあ実際の内容はアーカイヴでご覧いただくとして(3月31日まで販売)、自分のイントロダクションが案の定ガタガタになってしまったことを除けば、脱植民地化の話はそれなりにできたと思うし、なにより松浦さんの発表がとても勉強になるもので、お呼びして本当によかった。自分だけでやってたら大事故だっただろう。質疑応答も質問にめぐまれ、内容の濃い会になった。

終了後、松浦さんやF社の編集氏、某日高良祐さんらと打ち上げに。聴講に来ていた若いインターネットフレンズも交えていろいろ話していたのだが、最終的に編集氏が石の話をしはじめて、おれと日高さんが思いの外興味を持ってしまい、なんか石がヤバいという話題しか記憶に残っていない。

やや早めに解散して、時間をえいやっと潰してからバスタ新宿に。深夜バスで山形まで帰る。どっとはらい!