今日の朝、いつものように水槽を見たら、2匹のうちの1匹がなんかひっくり返っている。
イモリの話だ。
こどもが欲しいと言ったイモリ、お察しの通り世話を私がやることになった。初めてイモリを飼うし、そもそもは両生類とか触れない側の人間であった。飼い始めはお腹側を見るたびにゾワゾワしたものだけどすっかり慣れた。
2週にいっぺん水槽掃除することにしていて、まさにおととい、「わーわーわー!デカい生き物が襲ってきたー!」と大騒ぎしている2匹をひょいひょいとつまみ、「そろそろ慣れなさいよ君らは」なんて言いながら水槽のコケを落としていた。
イモリというのは寿命は長いが寿命が短い。
理論上は30年ほど生きるようだけど、その前に軽率に死ぬ。最初に飼った2匹のうち1匹は、水槽を脱走して数ヶ月越しでカラッカラに干からびて発見された。君ら両生類なんだから水のあるとこに逃げろよ!
イモリが干からびて発見された時、私はものすごく泣いた。ちょうど在宅の仕事始めの日で、しょーもない朝礼をミュートにしてボタボタ泣いていた。
イモリというのは特に気持ちが伝わることもない。こちらのことはデカい生き物くらいにしか(なんならデカい物体かもしれない)思っていなそうだし、人間が辛くても嬉しくてもケンカをしていても、無関係にウゴウゴしている。それがいい。
いいのだが、デカい物体は物体なりに慣れてくる。私が餌をあげようとすれば寄ってくるし、慣れてくるとスプーンに食いついてくるし、あと「物体の指」にも食いついてくる。歯がないから全然痛くない。
あと、物体の指にも乗ってくる。その手はものすごく小さくて、ものすごく警戒している。あと、体温差で熱いらしい。物体としては好きにしてもらっていいのでそのまま乗ってもらったりもした。
小さな指、小さな目、たぶん通じてない心、
それでも確実に、お互い物体同士として認識し合っていた。こちらが動けばあちらも動いた。それは客観的事実だ。
そして小さかったのだ。とても。
その小さいものは動かなくなった。たったおととい、ひゃーひゃー言いながら(言ってはいないか)水槽を逃げ回り、大きい物体につままれて水に落とされたりした、あの動きをしなくなってしまった。理由はわからない。小さい動くものはそういうことがある。
小さい動くものが動かなくなって、大きい動くものの方はどうなったかと言うと、すごく元気がなくなった。胸部が圧迫されたような感覚がするし、ともすれば泣きそうになる。痛くなかったらよかったな、怖くなかったらよかったなと願う。大きい物体だって色々考えている。
死んでしまったイモリは、パートナーが水槽から出して紙に包んだ。こどもたちが神妙に見ている。パートナーが夕方にお墓を作ろうと言った。今、冷蔵庫に入ってる(暑いから・・・)。
もう1匹のイモリは、今日もスイスイと泳いでいる。私はこっちに餌をやった。手は小さい。イモリも私も生きている。