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飲み会で、最初の一杯を「ケーキ」とオーダーしたい話

imori0125
·
公開:2026/9/3

酒が飲めなくなった。

おれは酒飲みで、もう30年は酒を飲んでいる。45歳なので30年はおかしい話なのだが、なにか時空の歪みがあると理解してもらえればいい。昔はいろんなことがゆるかったのだ。

20代は居酒屋が夕飯どころといった感じだったし、30代の一番仕事がハードな頃は「22時上がり?今日は飲みに行けるじゃん!」などと恐ろしいことを言っていた。体を壊さなかったのが不思議である。

そして40代、突然飲めなくなった。

ラブストーリーくらい突然である。正確には40半ばに突然きた。

今まではジョッキ→ジョッキ→ジョッキ→サワー類→焼酎(おひや)→日本酒(おひや)といった、そもそも膀胱的にキャパオーバーでは?のような飲み会の注文履歴であった。

しかし1年ほど前、ともだちと良いクラフトビールを飲みに行ったところ、小グラス3杯飲んで2日ほど寝込む二日酔いになった。本当に2日酔いである。

あまり具体的なことを書くのも汚いので書かないが、とにかく「異物を飲み込むと胃そのものを吐いて出し洗浄するカエル」というのを思い出して羨ましいと思った2日間だった。

予感はあった。そもそも、飲む量、機会がほぼなかったのだ。理由は、育児だ。

乳幼児期は死なないために睡眠時間が最優先、こどもの相手をしていればいつしか寝落ち。

保育園や小学校ともなれば、朝7時半くらいにはこどもの身支度を整えてやらねばならない。自然と朝型のサイクルになり、もはや21時過ぎると眠くなる。食事してこどもの宿題見たらそれで眠い。

飲むスキがなかったのだ。

酒を飲むことは訓練であると思う。

酒を飲めるとはアルコールの分解能力が機能しているという話なはずで、休ませれば休ませるほど分解能力は復活していくと想像する。しかし、現実問題、休ませすぎると退化していく。なんというか、酒の感受性みたいなところが。

そもそも酒の味が好きなタイプなので、量が飲めなくなっても悲しくはない。今は高くて美味しいビールを月に1缶、2缶のような飲酒スタイルに落ち着いている。

きっかけの日、いいクラフトビールを吐き散らしたことで「こんないい酒をすべて無駄にしてしまった、酒神様(さけがみさま)に申し訳ない、おれは飲酒者(いんしゅしゃ)の資格がない」と心から悔いたのだが、高くていいビールをたまに楽しむことでその贖いとしている。※カッコ付きのことばはおれが考えた概念

しかし個人の嗜好品としての飲酒と、飲み会での飲酒はなんかこう、違うものだ。

飲み会とは、小規模で人為的な“ハレ“の場で、祭りで、互いの立場を崩す社交の場だ。ハメを外すためのもので、アルコールで助走をつけた超小規模なカーニバルである。アルコールはあくまで助走をつけるための起爆剤にしかすぎない。

ただ、祭りであるから、派手で刺激的、また度胸試し的なことが喜ばれる。

分解能力のないものからしたら毒物でしかないアルコール、分解能力があってもやっぱり毒物であるアルコールをじゃんじゃん飲む様子とか、スペインの闘牛とか、その手のものと類似したアドレナリンが出るのじゃないかと思う。酒を飲んでいる人間ならたいていは二日酔いの辛さを知っている。そこにあえて踏み込む闘酒士(とうしゅし)に、酒飲みこそが喝采を贈る。

極めてマッチョで面倒くさい。

ここで突然、ケーキの話をする。

ケーキは美味い。しかしいろいろ高い。

まず価格が高い。おれは甘いものが苦手な方なのだが、作り込んだケーキならいつでも食べたい。ちゃんとケーキ屋さんで作ってくれたやつだ。ケーキ屋さんで作ってくれるやつなので高い。

そしてカロリーが高い。無印のバウムクーヘンとか価格に対してめちゃくちゃ美味いので大変気に入っているが、発酵バターのバウムが一本450キロカロリーと書いてあって震え上がった。中年の一食分のカロリーである。

ケーキとは、中年がおいそれと手を出せない特別な食べ物である。

ここに、祭りである飲み会とケーキを接続させるのはどうかと考えている。

最初の一杯をビールにするべし、というめんどくさい通俗道徳がある。そこでケーキを頼む。

中年以降で飲めなくなるのはものすごくよくあることだ。服薬の都合などもあり、いまどき、よほどなことでなければ飲酒をしないことを咎める人などいない。だが、いまだに「ちょっと盛り下がるウ」みたいな気持ちを持つ人はいる。酔ってくると後から言ってくる。本当にいる。

そこでケーキだ。ビールに合わせてケーキを持ってきてもらう。乾杯の発声で、おれはケーキの皿をグラスと合わせる。

飲み会の趣旨は祭りだ。ハメを外すこと、はっちゃけることである。

アルコールがなければはっちゃけられないのか?そうではない。人には無限のはっちゃけの可能性がある。その一つがケーキだ。あれは高い。カロリーも価格も高い。贅沢品で、神性がある。見た目も過剰に華やかだ。つまり、酒と同格のカーニバルの神輿足りえる。

飲み会ではややアホになると喜ばれる。祭りだからだ。ケーキを乾杯の時に掲げるのはアホだ。それは祭りだ。

おれは飲み会を楽しむ気だ。

ほか、パフェとか、クリームソーダとかもすごくいい。あと、人によってはトンカツとかもいいのでは。学生さん、トンカツ、トンカツをな、そんなに永久に食べられると思うなよ。

中年が普段食べられないものを掲げよ。そこに祭りが生まれる。

@imori0125
イモリを想う