保温調理器である、サーモスのシャトルシェフを使っている。
もう何年になるだろうか。記憶にないが、少なくとも15年くらい使っている予感がする。蓋の上のシールがちょっとペロッと剥がれているがいまだに現役、なんの庇護もない。
というのも当たり前で、この保温調理器というもの、要は「鍋がぴったりハマる魔法瓶」であり、それ以上でも以下でもない潔いアイテムである。鍋を火にかけ、沸騰したら鍋サイズの魔法瓶にズガンと入れる。朝イチで仕込めばコトコト5時間くらい煮込んだカンジになる。非電源。
壊れるとしたら「経年で割れる」ことだけ心配だが、今のところその気配はない。
そもそも、我が家の昼食はカレーであった。
コロナを契機に、おれとパートナーは在宅勤務になった。
昼食を考えるのは面倒だったので無印のレトルトカレーをまとめ買いしていたが、あんなにバリエーションがあっても飽きるは飽きる。その上、「レトルトを温める手間が面倒」などと言い出した。おれが。
このときに、電気圧力鍋を買った。セットしておけばタイマーで煮物が簡単にできる優れものである。
そこから先は快進撃であった。朝、朝食を食べがてら、冷凍の刻み玉ねぎとあまり野菜、あとなんか肉か魚、このあたりをポイポイ入れて水をいれてスイッチオン。昼には具材がやわやわと煮上がっているのでここにカレールウをとく。なぜかこれは飽きない。
まじで数年、平日は毎日カレーを食べていた。おれもパートナーもカレーが好きなのだ。
それが変わったのは今年、あのアメリカ大統領がイランに爆弾を落としてからである。
その蛮行自体にも真顔になったが、直接の、ミニマムな被害として電気代高騰の予感に震え上がった。そもそも我が家は衣類乾燥機を使っており、いく時には電気代が数万ほどにもなる。花粉症の時期、どうしてもすべてを乾燥機で乾かさねばならない家族がいるのだ。
タオルやシーツ、また一緒に過ごす家族の服でも鼻がムズムズするのでこればかりはコストと考えるが、あの大統領のせいで更なる加算はたまらない。おまえを乾燥してやろうか。
なにか電気を節約せねばならない。その時に引っ張り出されたのが、あのでかい魔法瓶鍋だったということだ。
はるか昔、こどもが生まれる前に買った鍋であった。そのときは使いにくかった。
当時、時間はいくらでもコントロールできるものだった。料理する時が食べ時であるため、「仕込んで保温」の意味が分からなかった。
年を取り、片手間に進行すること(料理をしながらこどもの音読を聞くなど、仕込んだあとに洗濯物を干すなど)ができて、初めてこの魔法瓶鍋の真価を理解した。おまえ最高じゃないか。
この魔法瓶鍋はガントチャートで管理すべきなのだ。ふたつみっつのプロジェクトが走っている時にこそ最高に輝く。料理のみにかかりきりになるのではなく、先に仕込み、その間別なことをするのがこの魔法瓶鍋の本領である。そしてなにより電力消費がない。トップ火力になったあとはガスも止める。災害時にも最小限のガスで済むのでとても良いものと考える。
電気圧力鍋はすっかり出番を失ってしまい、台所を占拠するばかりとなっている。おれは今日もカレーをズガンと鍋に作る。これがまたうまいんだ。調理器具の話をしたのに味の話をしてないのに気がついたけど、まあうまいとはいっておく。うまい。