FP2級試験も終わったので、やっと落ち着いて映画の感想が書ける。
今回鑑賞したのは日本では1月5日より放映されている、『コンクリート・ユートピア』という作品です。
ちなみにネタバレもあります。注意。
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世界各地で起こった地盤隆起による大災害で一瞬にして壊滅したソウル。
唯一崩落を逃れたファングンアパートには、居住者以外の生存者たちが押し寄せていた。救助隊が現れる気配は一向になく、街中であらゆる犯罪が横行し、マンション内でも不法侵入や殺傷、放火が起こりはじめる。危機感を抱いた住人たちは、生きるために主導者を決め、住人以外を遮断しマンション内を統制することに。臨時代表となったのは、902号室のヨンタク。職業不明で頼りなかったその男は、危険を顧みず放火された一室の消火にあたった姿勢を買われたのだった。
-オフィシャルサイトより引用
ものすんごい崩壊が起きたソウルの中で唯一崩れることなく残ったマンションと、そこに住む住人、そしてその周りに住まう人々の群像劇とでも言えばいいのだろうか。
率直な鑑賞中の感想としては「はやく帰らせてくれ」でした。
面白くないとかではなく、見るに堪えないという意味合いで帰りたかった。
住居を奪われ、自由を奪われ、人間同士で争いあい、殺し合い、そして仮初の秩序が生まれていく集団心理の一種の気持ち悪さと醜さがありありと描かれていたなぁ……という感じでした。
物語の主題としては「孤立した極限状況で人々はいかに振る舞うか、振る舞うべきか」という点に集約されている。一種の選民思想と共産主義的なイデオロギーに対する批判姿勢的なものが強く感じられたが、あくまで政治的意図は無い。大事なこと。
崩壊せずに運よく一棟だけ生き残ったマンション。もちろんそのマンションの居住限界はそのマンションの個室数に限られる。マンションの外には多数の人が崩壊した建物の中を凍死におびえながらさまよっている。食料には限界があり、むやみやたらにマンションに外の住人を招き入れるわけにもいかない。
マンションという小さなコミュニティの中で、自ら統率を図る者、外の住人(侵入者)を追いやろうとする者、はたまた性善説を唱え外の住人を匿おうとする者、様々な人間性が見て取られた。
マンション内でも食料に限りがあるため、配給制となるがマンションでの働き、内部統制の貢献力に応じてその配給量は変化する。その評価の物差しは誰が決めるのか。不満が生まれるのは想像に難くない。
ときには探索隊を組み、崩壊した外の住居や崩れたスーパーマーケットから食料を強奪する必要もある。もちろん生存者はマンション内の住人だけではない。ときには殺人も仕方がないのである。マンション内の仲間を生かすにはその方法しかないのだ。
大切な家族を守るために、人は極限状況で非人道的な手段に手を出すのか、出さないのか。答えは一つではなく、劇中に登場する多くの人々なりの答えがあり、そのどれもが否定も肯定もすることは難しいものだった。
特に印象に残った登場人物がいる。最後まで性善説を貫き、マンションの住人が狂っていく中、最後まで誰も殺さないことを願ったヒロインの女性である。外の住人を殺してでも物資を奪うのは仕方がない。そんな倫理がまかり通る世界は明らかに異常だが、マンションを脱出した彼女は、マンションの住人たちのことを「何も変わらない、普通の人たちだ」と言うのである。
この言葉に思わずはっとさせられた。また、締めにこの言葉があったおかげで『コンクリート・ユートピア』という映画がただただ人間の不快感を描いただけの映画にとどまらず、その集団心理は誰にでも起こりうるものであり、私たちが簡単に気持ち悪いと一蹴してはならないものであると感じた。
アジア映画ということで顔立ちに親近感もあり、マンション(団地に近い?)が並ぶ風景も日本に近く見慣れているからこそ刺さるものがあった。『ミッドサマー』の鑑賞後の後味と同じ質感だが、ラストの締め方のおかげで幾分かさわやかで、それでいてこちらのほうがやけにリアルに感じられた。
新年の地震もあり、日本での上映はタイミング的に売れづらいか……?というのが正直な所感だが、一度は観てほしい映画かもしれない。
めちゃくちゃ面白かったです!重たいけど
あと主演の一人が遠藤〇一さんに見えて若干意識が持ってかれた。