国木田独歩「少年の悲哀」※感想メモ無し
坂口安吾「紫大納言」※感想メモ無し
イワン・ツルゲーネフ「はつ恋」
少年の初恋がほろ苦く打ち砕かれる描写でしか得られない栄養はあるけど、それだけじゃなく主人公の父親への感情も克明に描かれてた為に独特の味わいがあって、さすが露文学史に残る名作だなと思いました(作文)。次は岩波文庫の訳で読みたい。主人公が父親を能動的に憎んだり嫉妬したりせず、ショックは受けても単純にそういかないあたりがツルゲーネフの半自伝的小説というだけあってかえってリアリティあるなぁと思いました(再作文)。初恋は主人公だけじゃなくジナイーダの気持ちも指しているのがとても味わい深い。
織田作之助「夜光虫」※感想メモ無し
アガサ・クリスティ「ナイルに死す」
殺人が起こるまでのドラマが濃密で、だからこそ誰が死ぬのか全く読めなくてハラハラさせられた。登場人物たちの嘘や秘密を一つずつ暴いていくポアロの鮮やかな手管には惚れ惚れする。コーネリアちゃんとロザリーが可愛かった。
貴志祐介「黒い家」
悪意がどんどん迫ってくる恐怖や不気味な雰囲気、今にも血の匂いが漂ってきそうな、臨場感溢れる文章力がすごい。スリリングで面白かった。ただわたしの想像力が足りないせいか、正直そこまで怖さは感じずにサクサク読めてしまった……もっと言うならあんな酷い目に遭ったのに生まれつき邪悪な人間はいないと言い切れる主人公の恋人が一番怖かった。レッテル貼りが良くないという意見は理解できるけど自我が強すぎる……。
宮下奈都「羊と鋼の森」
最初は主人公の心情がよく理解できなくて読むのに苦心したけど、無理にそれに寄り添おうとせず書かれた文章をありのまま受け止めればいいのかなと読み方を変えたら、びっくりするほど言葉が頭に入って物語にぐいぐい引き込まれた。ピアノの話のはずなのに木々や土の匂い、雨の感触、羊の情景、森の幻想がピアノの音と一緒に頭に浮かぶし、五感で錯覚してしまう。そんな文章が後半~終盤にもなるとすごく心地よかったし、ここまでくると主人公の心境を一歩引いた所から見守っていくという、新たな読書の楽しみ方を見出すこともできた。
イタロ・カルヴィーノ「見えない都市」
単体で長編小説が書けそうな幻想、奇怪、摩訶不思議な都市についての報告が2~5ページ×55編。一つ読み終えるごとに、やたらドラマチックで濃厚な夢から覚めた直後みたいな疲労感と余韻があり、それをなかなか振り払えず、とてもじゃないけど一気読みは無理だった。報告の合間に挿入される、都市の報告をする旅人マルコポーロと報告を聞く皇帝フビライハンの対話すら、そのどれもが現実と空想、実在と非実在の垣根があやふやで、読み進めるごとにそのあやふやのさらに奥深くに迷い込むような気持ちにさせられた。こんな未知の体験ができたなら頑張って読んでよかった。
須賀しのぶ「革命前夜」
450P超えの文庫本を土日とばして4日間の通勤時間だけで読み終えた。東西分裂時代の共産主義ドイツも、ピアノやオルガンやヴァイオリンやオケといった音楽表現も、苦悩して恋をしてぶつかりあって自由を渇望する青年たちの心理も、全部が全部、密度がパない。臨場感が凄まじい。まるでその場にいるみたいな緻密な空気感が文章から伝わってきて、そこに挫折を味わった主人公の苦悩も重なるから、ともすればたた重苦しいだけになりかねない。だけど歴史の流れに乗って押し寄せてくる革命の波に乗って、物語も怒涛の疾走感で進んでいき、ページをめくる手が止まらなくなる。この小説を腐すようなやつはただの逆張りマンだから信用ならない、って断言できるくらい面白い小説だった。歴史をいい意味でエンタメに昇華できるのすごすぎる。スランプの字書きが読んだら筆を折るか、喝を入れられて奮起するかのどっちかだと思う。面白かった!
カズオ・イシグロ「夜想曲集」
しっとりした文章の所々に、何やってんだこいつ…?と思う描写がちょくちょくあり(例:犬になりきって親友の家を荒らしまくる、七面鳥の腹に手を突っ込む等)、はっきり言って何のジャンルの小説なのか説明に困る。たぶん何でもありな小説なんだと思う。音楽がテーマなんだけど、それ自体よりは中年初老の男女の悲喜交交がメインテーマとして印象に残る、まさに人生の夕暮れを切り取ったかのような短編集。個人的にはコメディ系よりも哀愁漂う「老歌手」「モールバンヒルズ」が好き。思うに、この最初の「老歌手」でこれは切ない系の短編集だと認識してしまったから、その後のコメディ描写に戸惑ったのかも。でも総合的には面白かった。
佐藤正午「月の満ち欠け」
繋がりが少しずつ明かされていく過程にはドキドキしたし、最後まで目が離せなかった。時系列がかなり前後するけどすごく読みやすいから全然混乱せず後戻りもせず、数日で完走してしまった。それくらい面白かったけど、「愛の軌跡」なんていう感動ラブストーリーにはとても思えなくて終始怖かった。似たような題材のライオンハート(恩田陸)はストレートに大好きで何度も読み返してるんだけど。こちらは好きな人に会う為だけに何度も生まれ変わるというよりも、自分の目的の為だけに女の子の意識を乗っ取って行動してるように見えてしまったのが原因かな。そこに一途さや愛の強さではなく怨念や執念、身勝手さを感じて恐怖を覚えたのだと思う。
貴志祐介「新世界より」
ほんとにめちゃくちゃ面白かった……アニメじゃ語られなかった世界観設定や描写がとにかくこれでもかとばかりに微に入り細に入り書かれているので、引き込まれないわけがない。知識は武器だとつくづく思う。はるか未来なのに文明が(現代に比べれば)後退した、懐かしい田園風景が広がる牧歌的な世界で、文字通り子どもの人権がなく根底には常に恐怖が横たわる地獄みたいなディストピアを筆一本で作り上げた貴志祐介先生は凄すぎる。
仁木英之「モノノ怪 執」※感想メモ無し
野呂邦暢「愛についてのデッサン」
表題作(連作短編)は、古本屋の若主人がありとあらゆる古本の謎をめぐって日本のあちこちを旅する話。本好きは絶対楽しめるしワクワクする。他の短編は「世界の終り」がいきなりバイオレンスでちょっと引いたけど、他のを読んでいくうちにこれらは、相手とうまく噛み合わない、あいつが気に食わないから攻撃する、といった不毛で不健全なコミュニケーションがテーマなんだと気づいてからぐっと面白く読めた。バイオレンスだけど「隣人」と「鳩の首」が好き。
大倉燁子「美人鷹匠」※感想メモ無し
ワシントン・アーヴィング「スリーピー・ホロウの伝説」
面白かった。ディズニー短編アニメのイカボード先生はかなり原作に忠実だったんだな……っていうのが一番のびっくりポイントだった。
田中貢太郎「水面に浮んだ女」※感想メモ無し
国木田独歩「忘れ得ぬ人々」※感想メモ無し
国木田独歩「恋を恋する人」※感想メモ無し
倉橋由美子「完本 酔郷譚」
一言で言えば金持ち美青年が不思議な酒に酔って不思議な世界に導かれて、概ね人外な美女とエッチなことをする話。だけどとにかく文章が格式高くて美しくて、男に都合の良い妄想じみた下品さが全然ない。中には主人公が女体化出産させられるエロ本みたいな話もあるけど、それも下品とは程遠く、只々不可思議で幻想的。それと息をするように和歌や漢詩、中国あたり?の故事成語が引用されるので、自分の教養のなさに頭を抱えたくなる。めちゃくちゃ面白いってわけじゃないけど、幻想世界や桃源郷で遊ぶようなふわふわした心地よさと背筋の冷える恐ろしさをたっぷり堪能できて、読んでて楽しい本だった。倉橋由美子作品はじめてだったけどもっと色々読みたくなった。
泉鏡花「国貞えがく」※感想メモ無し
夢野久作「月蝕」※感想メモ無し
太宰治「薄明」※感想メモ無し
ギ・ド・モーパッサン「狂人日記」※感想メモ無し