2021年 読んだ本の感想メモ

imunana17
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伊坂幸太郎「ホワイトラビット」

伊坂節の真骨頂って感じでめちゃくちゃ面白かった。事件の全容が明らかになっても最後の最後まで仕掛けを用意して鮮やかに伏線回収していくのはさすがだと思う。黒澤さん、泥棒だけど善人でも悪人でもなく、正義感は持ってないけどそこそこに義理堅く、基本的に有能で冷静で頼りがいがある。魅力的なのはもちろんどこにでも出せる便利キャラだ。

小林泰三「ティンカー・ベル殺し」

大昔にピーターパンとウェンディ読んだはずだけど記憶に自信がなくなった。何を言ってもネタバレになりそうだけど面白かった。それにしても井森/ビルは不思議の国での事件と並行しながらホフマン宇宙とオズの国とネヴァーランドに迷い込んでたのか……?私だったらこんがらがって発狂する。

アガサ・クリスティ「アクロイド殺し」

このトリックを約100年前に書いたクリスティ is すごい。できれば何も知らずに読みたかった。確かアクロイド殺しって○○○○トリックと○○○○○○○○○で有名だったような……別作品だったかな……??と記憶あやふやなまま読んでいたのですべてのネタバレを知ってたわけじゃないけど、それでもやっぱり最後に「えええーーー!?!?!??」って叫びたかった。記憶喪失になってもう一度読みたい本筆頭。でも知ってたら知ってたでクリスティの伏線仕掛けの巧みさに舌を巻きっぱなしで楽しく読めたのでやはりミステリの女王は偉大。似たような先行作品は既にあったらしいけど、当時の読者はそりゃびっくりしただろうな……。

太宰治「女生徒」

昭和の枕草子というか徒然草?十代女子のゆらゆら心情をこんなにも克明に書ける太宰さんマジですごいなぁ。

アガサ・クリスティ「春にして君を離れ」

とんでもねぇ本だった……主人公の中年女性の描き方がそれこそ晴れ渡った砂漠みたいに克明すぎる……マジでこういう人リアルにもいるわ……って思うし、自分にこの主人公みたいな側面は全くありません!!!!!とはとてもとても言い切れない。エグ面白かった。本編は主人公の内省とか心理描写がメインで誰も死なないけど、都度挿入される過去回想やキャラの言動がきちんと手がかりになってて、少しずつ真実を浮かび上がらせていくのはさすがミステリの女王だと思った。心理描写もトリック仕掛けも上手いクリスティ本当に凄い。

町田康「記憶の盆踊り」※感想メモ無し

伊坂幸太郎「AX」

前半は日常(家族関係)と非日常(殺し屋の仕事)の表裏一体感に薄ら寒い面白さがあったけど、これまでのシリーズと比べるとイマイチだなぁ……と思っていたのが、後半Eあたりからブーストが掛かって前半の仕込みや伏線が一気に効いてきたのが凄かった。

恩田陸「薔薇のなかの蛇」

やっぱり理瀬シリーズは世界観や舞台設定が売りだ。ミステリー部分は物足りないというか、血みどろ凄惨な割には、それで終わり??真相それだけ??あの娘は結局それっきり??って若干拍子抜けしたけど物語としての終わり方は好き。しかし麦の海に沈む果実と黄昏の百合の骨を読んだのがだいぶ前だから、理瀬が何やりたいのか分かんなくなってきた……。彼女の目的が麦の海のラストで語られてたアレなのは分かってるけど、それがどうして薔薇のなかの蛇でのあの目的(行動)に繋がるのか点と点が結びつかない。

夢野久作「名娼満月」※感想メモ無し

町田康「少年の改良」※感想メモ無し

パトリック・モディアノ「暗いブティック通り」

面白いと感じてきたのが後半も後半にかけてだったから途中色々と取りこぼしている気がする……冬ソナの元ネタというから読んでみたけど、記憶喪失の男があちこちを訪ね歩いて自分の過去を取り戻していく話だったから「???」と首を傾げていた。調べたら冬ソナでもペ・ヨンジュンが後半で記憶を失って全くの別人を名乗って登場しているらしい。

モーリス・ルヴェル「夜鳥」

不気味と残酷と皮肉と哀切とほんの少しの人情が入り混じった珠玉短編集。めちゃくちゃ面白かった。マイベスト怪奇小説のうちに入る。

五木寛之「青年は荒野をめざす」

読む前からわかってたけどこんな世の中(コロナ禍)じゃなかったら、全て放り出して旅に出たくなった。ストックホルムでゲイの音楽家にそっちの意味で買われて別荘で過ごす話と、パリでの黒人ジャズマンとの話が好き。黒人差別の話は今だったらアジア人差別にも当てはまるのかな等とも考えさせられた。難点って程じゃないけどノれなかったのは、主人公ジュンが旅先での出会いや体験や演奏を通して自分の中のジャズを見つめ直して葛藤して一皮も二皮も剥けていく過程はすごく良かったのに、彼に関わる女性キャラがあんまり魅力的に思えなかった事……。主人公は思っていたよりずっと好感持てた。

泉鏡花「海城発電」

国粋主義を極めた軍人に向かって自分の信念を淡々と語る主人公の台詞、鏡花の筆致が凄絶なのに凛と澄み切っててぐいぐい引き込まれた。テイストとしては夜行巡査に近かったな。最後で判明した「発電」の意味に震えた。鏡花さんすごい。

ダグラス・アダムス「宇宙の果てのレストラン」

事象渦絶対透視機で平然としてるゼイフォードとかミリウェイズの牛とか地球人類の祖先の真相とか安定の面白さでした。ここからどうやって続くんだ……?

米澤穂信「追想五断章」

氷菓シリーズ以外の米澤穂信作品は初めてだったけど面白かった。少しずつ真相(その時その人が何を思ってそうしたのか)が判明していく過程に引き込まれたし、最初から読み返したらゾッとした……作中作のリドルストーリーも秀逸だった。氷菓シリーズもそうだったけど、作中人物の「何を思って」という動機とその根幹の感情が読了後もすごく尾を引く……。怒り悲しみと一言では説明しきれない人間の心の描き方と、それを謎に加工してミステリに仕上げる構成が大変に上手い。

サマセット・モーム「ジゴロとジゴレット」

人間の克明な描かれ方がめちゃくちゃ面白かった。「征服されざる者」と「サナトリウム」が好き。モームの書く女いやな方向でリアルすぎる。

村上春樹「女のいない男たち」※感想メモ無し

@imunana17
療養中のオタクです。 Misskeyに同じIDで生息してます