きのうの餅巾着の話と似たような経験をお持ちの方が結構いらした――もちろん、私ではなく弟の方の立場――ので、もう少し気を付けねばと思ったのだが、この無関心さが発揮されるのがほぼ身内だけだということも付け加えておきたい。
私はだいたい4か月に1回、ヘアカラーにいく。1回おきにブリーチもして金髪にしている。前回ブリーチとヘアカラーをした日、仕事から戻った弟が「髪、きれいになったね」と言う。ところが、私は終わったことはすぐに忘れるタイプだ。2秒ほど考えてから「あ~。そうそう、今日染めてきた」と答える。心の中で「細かいことによく気付くな」と思いながら。
数日後、福岡の自宅に戻ると私を見るなり夫が「あ、いいじゃん」と言う。私には何のことだか分からない。鏡を見て「あ、髪のことか。細かいことによく気付くな」と思ったくらいだ。
ある日、私は夫に些細な違和感を感じた。あれ? 何かが違う。こんなんだったっけ? ……もしや……。「ねえ、髪切った?」と聞くと夫は無表情になり、「はい、3日前に切りましたけど。今お気付きになりました? そうですよね、おじさんには興味ないですよね」と言う。そこでよせばいいのに、「髪切りに行ったなんて、全然知らなかった」と口を滑らせてしまった。「言いましたよ。仕事してるあなたに“床屋に行ってくる”って言ったら、“うん”って答えましたよ」と終始敬語で説明された。
気付かないのは髪型の変化だけではない。毎年、誕生日の朝は弟から「誕生日おめでとう」のメッセージが届く。逆はどうかというと、これがほぼ忘れるのである。誰の誕生日であっても同じだ。
私はパソコンでファイルを保存するときにファイル名の頭を日付にしている。「20251112_ABCCompany_ProjectXX」という具合に。毎日、何度か日付を入力しているわけだが、年に数回(つまり家族の誕生日)、「この数字の並び、見覚えがある。何だっけ?」と思うのだ。そして、夜になって「あ! 夫の誕生日!」という具合に思い出し、「あの~、お休み前にすみません。お誕生日おめでとうございます。なにかご入り用のものとかおありですか? Amazonギフトカードでしたらすぐにご用意いたしますが」と伝えたことは一度や二度ではない。夫は毎年、「今年は思い出すかな? 思い出すとしたら何時ごろだろう?」と思っているらしい。
リマインダーに登録すればよいのだろうが、「家族の誕生日をリマインダーに入れるのは、さすがに横着が過ぎるやろ?」と踏みとどまっている。まあ、自分の誕生日も気にしていないので、なんとか勘弁してほしい。