オーイタの悲劇

MYK
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公開:2024/11/28

11月某日、大分で行われた夫の大学の軽音サークルライブでギターを弾いてきた。去年に続き2回目の出演である。去年助っ人をしてくれたドラマーが腰痛でドラムを叩けないと判明して一旦は出演を諦めたのだが、岡山在住のドラマーK君(大学4年のときに夫と一緒にやっていた)が36年ぶりに叩くとすぐに名乗り出てくれた。ベースは去年と同じF君。今回も私を含め全員アラ還の同級生である。

60近いということは朝が早い(ただし私を除く)。当日は早起きが苦手な私ですら緊張と興奮で朝4時半過ぎに目が覚めた。6時前には家を出てメンバーを拾い高速で一路大分へ。

サウンドチェックは10時開始だったが、それより早く大分に着いてしまった。メンバーがそろっていたので一番乗りでサウンドチェック。完璧だった。「なんかいい感じじゃない? ここ、音がいいね」と余裕をかましながら他のバンドの様子を眺め、いつになく早起きをした私はうつらうつらし始めた。出番は午後4時半だから6時間も先だ。

開演は午後2時、出演バンドは15組、参加者100名超。サークル創部50周年記念だとかで、このイベントは今回で最後らしい。参加者の年齢層は50~60代が中心。ジャンルはロック。1バンド30分の持ち時間でどんどん交代するのだが、長年続けている人が多いせいか転換も進行もスムーズだった。私たちが出るまでは

サウンドチェックでは完璧だったのだが、本番音を出してみるとまったく自分の音が聞こえない。人が音を吸うので聞こえ方が随分違っていた。しかも私たちのバンドはかなりの爆音である。リハもギリまでボリュームを上げていたのでPAの方で絞られたかもしれない。「あれ? 自分の音が全然聞こえないな」と思いながら、あちこち間違いつつ3曲目。アンプのボリュームを上げて不協和音が聞こえることに気付いた。正面で見ていた先輩が曲間に私のところに来て「たぶんチューニングがずれてると思うよ」と耳打ちしてくれた。ここでギターとベースのチューニングが合っていないことが判明したのだ。

昨今はみなチューニングメーターを使っている。ところがメーターによってかすかな誤差があったり、多機能すぎてうっかり違うボタンを押してしまいウクレレ設定になったり、半音上げ/下げになったりすることも多い。演奏を始める前にギターとベース全員でオーケストラみたいに確認すれば良かったのだろうが、ロックバンドは普通そういうことはしない。

チューニングを直してからの2曲でも挽回できたとは思えない。出番後はいろんな人に慰められたけど、あまりの悔しさと悲しさでビールの味も分からなかった。

去年と違うのは助っ人ボーカルを後輩女子に頼んだので、とても華やかな『レモンティー』を披露できた。Tシャツにジーンズという普段着でギターを弾いている私と違い、後輩女子は派手な衣装に身を包んで艶やかなパフォーマンスを見せてくれた。

ところが、これが夫の不満に火を付けたらしい。「コンビニ行くんじゃないんだよ?」ともらった写真を見ながらぼやいている。写真を見返してみると、男性陣はみな普段着みたいな格好だが、女性はみな私よりはよそゆきの格好だ。少なくとも「コンビニ行ってくるわ」な格好ではない。

それにしても、男性は服装のことをあれこれ言われないのに、どうして女性はきれいな服を着ないといけないのだ?とモヤモヤはおさまらない。ローディーなどいない素人バンド、楽器と機材を全部自分で運んでセッティングするのに、そこにさらに衣装まで別に用意しろと?!

翌日ネットで女性ギタリストの画像を漁ってみたが、若くてシュッとした人の衣装は何の参考にもならない。若くないシュッとしていない人を参考にするべきだろうなと思い、ナンシー・ウィルソンの動画をチェックした(ナンシー先生ごめんなさい)。

カッコいいな。ここを目指すべきだな。髪伸ばすか……(違)

@imyk_ja
福岡在住の英日実務翻訳者。猫と酒とロックが好き。