私には憧れの先輩(以下、S先輩)がいる。S先輩を初めて見たのは高校1年生の時、同級生に誘われて出かけたアマチュアバンドコンサートだ。佐野元春のコピーバンドでギターボーカルをするS先輩にビビッときた。颯爽とギターを弾きながら歌うS先輩の大ファンになった。当時、私はまだバンドをやっていなかった。
私が通う高校の体育祭をS先輩が見に来ているという情報を聞きつけたときは、校内中S先輩の姿を探して走り回った。先輩の姿を見つけたときは舞いあがってしまい、「Sさん、ファンです! 握手してください!」と気持ち悪いファン丸出しになっていた(笑)
自分がバンドをやるようになってからはS先輩をちょっと避けていた。恐れ多くて近寄れないのだ。ちょっと離れたところからじーっと見ていた。気持ち悪い。幼なじみが一時期S先輩のバンドでギター弾いてたので、「ちょっと、S先輩のこと教えてよ」と情報を聞き出していた。気持ち悪い。S先輩のバンドはプロ志向の強い本格派で、コンテストでも好成績を収めていたのでたくさんのファンがいた。
大人になってからもギターの師匠経由で「Sたちは今もバンドやってるよ」と聞いていたが、私は音楽を離れていたし、地元からも離れ、いつしか思い出すこともなくなった。ところが今年、S先輩たちの還暦記念ライブで再会。全然変わっていない! 昔と同じく優しい笑顔で、ギターを弾く姿は颯爽としている。S先輩に会うのは40年ぶりだし、そもそも私は遠くからじーっと見ていただけなのだ。覚えているいないの前に、私のことなど知らないはず。
S先輩と親しい友人がいたのでしれっと近くに座り、小声で「Sさん、ファンです。握手してください」と手を出した。気持ち悪い。S先輩は「へ? まじ? うれしい!」と快く握手してくれた。友人が「Sさん、覚えてないよね。この子一緒にバンドやってたギターのミユキちゃん。昔からSさんのファンなんよ」といらんことを言ってくれた。「ミユキちゃん、FacebookでSさんとつながりなよ!」とまたもやいらんことを言ってくれた。
そこまで言われて友達申請をしないと「本当にファンなのか?」と疑われるのではあるまいか? いやしかし、友達になっていただけるのだろうか?と丸1日考えて友達申請をした。あっさり友達になってくれたし、たまにコメントをしてくれて大変恐れ多い。返信をしようとすると緊張してしまい、無駄に長文の返信をしてしまう。気持ち悪い。
昨日もS先輩に「ギター頑張ってる?」と聞かれたので、これはもう全力で頑張るしかあるまい。いよいよ明日、私のライブ本番だ。「ギターはソロが命!」とも言われたので、全力でソロ弾く所存。