思うところあって、最近ちょっとだけ酒を控えている。「思うところ」なんてもったいぶった言い方をしたけど、健康診断を来月に控えているのだ。ありのままの私を見てもらってもいいのだけど、そうするとまた保健師さんの指導が入るので週に数日休肝日をもうけることにした。
実はもう一つ理由がある。『昨夜の記憶がありません――アルコール依存症だった、わたしの再起の物語』を読んでいるのだけど、つらすぎてなかなか先に進めない。そう、身に覚えがあるのだ。飲むと必ず記憶がなくなるまで飲んでいたあの頃を思い出して、「よく無事で済んだな」と冷や汗をかき、ページをめくる手が止まる。いや……無事で済んだとは言いがたい……ことも……モニョモニョ。
同僚と飲んで気分良くできあがって階段を踏み外して骨折したことがある。幸い(?)左足だったので翌日自分で運転して病院に行った。それ以来、飲みに行くときにヒールの高い靴は履かないことにした。
またあるときは、朝起きたら目の周りが腫れていて、コンタクトレンズが片方なくなっていた。そのときは運転できなかったので夫の運転で眼科へ。私の顔を見た先生は厳しい口調で「ご主人! 診察室から出て!」と夫を追い出すと、「正直に言って大丈夫だから安心して。殴られた?」と私に聞いた。DV疑惑をかけられたのだ。このときは人生で3本の指に入るくらい大いに反省した。どのくらい反省したかというと、その後数年酒をやめたほどだ。
また飲み始めたのは、マラソンを始めた頃。久しぶりに飲んだビールはとてもおいしかった。運動で汗をかいた後のビールと食事は最高だった。それからずっと、食事のお伴として酒を飲んでいる。食事が終わったら酒も終わり。記憶がなくなるまで飲んだりしない。マラソンをやめた後も酒は続いている。ビールだけじゃなく、ワインや日本酒もたしなむようになった。
そして今。休肝日の少なさを健康診断のたびに指摘されるようになった。「量は大丈夫なんですけど、毎日ですか? ちょっとお休みも入れてください」と。そこで、飲む頻度を減らす代わりにおいしいお酒を飲むことにした。
実家の近くにお気に入りのバーがある。夕方早くから営業していて、クラフトビールとクラフトジンが自慢の店だ。最近ジンにはまっているので、マスターおすすめのジンでジントニックを作ってもらった。「あれ? ジンお好きでした?」と聞かれ「最近ビール飽きちゃって。ビールっつっても、安いビール的なやつですよ」「ああ、金麦とか?」「そうそう。どうせならおいしいお酒を週に3回くらい飲めばいいやって思って」「いやマジそれですよね。最近、量より質だなって思いますよ。金麦5本でクラフトビール1杯分くらいですしね」みたいな会話をした。
ジントニック1杯飲んだだけで帰ったのだが(ウォーキングの途中なので)、お支払いは1300円。心の中で「金麦10本分じゃね?」と思いつつPayPayして帰路についた。チャージ料なければもっと通えるのに。