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ジャム

MYK
·
公開:2026/7/23

ジャムはジャムでもイチゴジャムではない。「ジャムセッション」のジャムである。単に「セッション」とだけ称することも多い。日本国語大辞典には、「ジャズ演奏家達がクラブなどの閉店後、仕事を離れて行なう即興演奏。また、その集まり。転じて、臨時編成のメンバーがあまり打ち合わせをしないでその場で行なう即興的演奏をもいう」とある。

去年、発表会ライブで知り合った人に「セッション会やってるんで、よかったら来ませんか?」と誘っていただいた。とはいえ、先の日本国語大辞典の定義にあるように「あまり打ち合わせをしないでその場で行なう即興的演奏」というのがネックである。楽譜は読めないが、フリーのアドリブもできない。要は、人前で演奏できるのは「覚えてきちんと弾けるようになった曲」だけなのだ。「わ~、行きたい!」と言ったものの、行かないまま1年が過ぎた。

今年も発表会のときに「一度来てみて!」と再度お誘いいただいたので、思い切って様子を見に行った。ただし手ぶらで。会場は発表会でサポートしてくれたドラマー氏が経営するライブバーだ。一杯飲みながらどんな雰囲気か偵察するだけのつもりだったのだが……ドラマー氏に「この前の曲やりましょう! ね!」と促され、あれよあれよという間に借り物のギターを抱えてステージに立っていた。

しかし困ったことに、発表会からひと月、ほとんどギターを弾いていない。当然、ぐっだぐだの演奏だった。血の気が引きかけた私に追い打ちをかけるように、「もう1曲いこう! 何か弾きたい曲は?」「え?……いや、べつに……」「じゃ、Aでぐるぐる回そう! ソロ、適当に入れて」と有無を言わせず2曲目スタート。

説明しよう。「Aでぐるぐる回す」とは、A、D、Eの3つのコード(厳密にはメジャー、マイナー、セブンスなど曲によってバリエーションがある)を組み合わせた12小節を繰り返すことをいう。同じパターンを繰り返すだけなので、知らない曲でもとりあえず弾けてしまう便利なシステムではある。

面白いことに、ボーカルの人以外、何の曲か知らないまま演奏が進んでいた。歌パートが終わった瞬間、ボーカルの人が私に合図をした。「ソロを弾け」という合図だ。知らない曲なのに。

あわあわしながら12小節のソロを終えると、もうひとりのギタリストが渋いソロでつないでくれた。ほとんどの人が何の曲か分からないまま演奏している(聴いている)ので正解もない。演奏後、知人に「いきなりなのにすごいねー。堂々としてた!」と妙なところを褒められた。入れ替わり立ち替わり交代しながら、みんなが好きなように演奏する、正解のないスタイルは緊張もするけど思った以上に楽しかった。

先日、2回目のセッションに参加してきた。今回は自分のギターを持って行った。「何か弾きたい曲は?」と聞かれたので「じゃ、バットマンのテーマで。Aから回して、ドラムは8ビートで。途中ソロ適当にお願いします。私もソロ入れるんで。カウントは私が入れます」とこちらから希望を伝えた。そう、セッションで打ち合わせられることなんてこのくらいなのだ。それでも、それらしいバットマンのテーマができたので満足した。

この日も10人ほどが入れ替わり立ち替わり、ひとり3曲ずつ演奏をし、そろそろお開きというところで「せっかくだからもう一回弾かないですか?」とステージに引っ張り出された。「他の人のギターでもいいですか?」と渡され「じゃ、Eで」「へ? E? その次のコードは?」という感じでおろおろしながら演奏スタート。途中、「私だけなんか違うコード弾いてるな」と気付いたが、知らない曲なのでどうにもできず。結局、2曲追加で弾かせてもらった。しかも最後はクラプトンで締めるというなかなかの大技だった。

終わった後、はじめて参加したというドラマー君と話をした。「ぼく、今日はじめて来たんですけど、突然ソロ振られて、何が何やらよく分からんまま夢中でした。あれでよかったんですかねえ? でもすごく楽しかったです」と言っていた。「最高のドラムソロだったよ!」と言うと、嬉しそうに「ありがとうございます。じゃあ、また!」とチャリで帰って行った。

この数年、ギター以外のメンバーがいなくてバンドができない問題を抱えていたのだが、セッションに参加すれば(知らない曲であっても)とりあえずバンドで演奏できるという道が開けた。来月も参加すべく、みんなでやれそうな(みんなが知ってそうな)曲を練習中。

@imyk_ja
福岡在住の英日実務翻訳者。猫と酒とロックが好き。