4月から始まった朝ドラ『虎に翼』を三日くらい遅れて追いかけ始めた。朝ドラをちゃんと見るのは2020年のおちょやん以来。スカーレットやエールも好きだったけれど、その二つやおちょやんは出演している俳優を目当てに見始めたものだったので(終わってみると内容も素晴らしかったけれど)、今回のように「ただなんとなく」追いかけはじめたのは久しぶりかも。
焦点を当てられているのは女性初の弁護士で、昔の法律がたくさん出てくる。性別で区別されていた時代の理不尽。理不尽が法律となって女性を縛り付けている、そんな時代のこと……。
私は大学時代、法学部で勉強をしていた。高校生のときにAO入試を受け(いまもあるのだろうか、AO入試…)、そこで志望の動機を受け答えしたり、簡単な法律の考え方などを記述式で回答したりとテストがあったので、その対策のために試験前からいくつか本を読んだり、自分なりの考えをまとめたりした時間があった。残念ながらAO入試では落ちてしまったのだけれど、そのときに自分が法律をどうして勉強したいのか、ということを自分自身で確認できたので、その時間はあって良かったなと振り返って思っている。
朝ドラの主人公の寅子ちゃん。「はて?」が口癖のかわいい女の子……。話が逸れるけど、伊藤さん(女優さん)の少女時代の演技が可憐でかわいらしい。すごいな~と思いながら見ている。
「はて?」という口癖もかわいらしい。「でも!」と反論するより、一旦「はて」と間をあけることで摩擦を減らせるような気がするし。3話か4話かで、寅子の親友が「したたかに生きなきゃ♡」と言っていたけれど、私はなんだか嬉しくなってしまった。女はこう、男はこう!という分け方を嫌う風潮が強い現代で、私もそういう分け方はしないほうがいいと思う場面もときどきぶち当たるけれども、そうはいってもやっぱり女性にしかないしなやかさや女性特有の考え方というものはあると思う。私は男の人に大きな声で怒鳴られるのは苦手だけれど、そういう男の人にも笑顔でゆっくり丁寧に対応すればどうにか受け流せることを知っている。そういうふうに。
ちょっと話が逸れてしまった。
寅子が法律を学びたい、と思ったのは、彼女の時代にある理不尽を肌で感じ取ったことがきっかけだった。そのきっかけに私は共感してしまって、だから見続けることにしたのかもしれない。私が法学部を志望したとき、絶対的な理不尽に襲われていたわけではなかったのだけれど、でも漠然とした将来への不安があって(いつどこでなにがあるかわからない、のような)、このさき生きていくために私は私が生きている世界の仕組みを知っていなければならない、と思ったのだった。
生きていると、ときどきものすごくバカみたいな理不尽にぶち当たることがある。私自身がぶち当たるわけではなくて、ニュースとかを見て、やるせないなぁ……という感じの。
裁判の結果に疑義の声があるのを、SNSを通して見かけることもある。クリエイターの権利について議論があるのも。そのたびに私は相反する感情が自分のなかにあることを発見してしまう。そうだそうだ理不尽だ! というものと、法の下の解釈ではそうなってしまうんだなという諦めと……。
でも、朝ドラを見ていると諦めているだけじゃだめなんだろうな…、と背筋が伸びる気分にされるのだった。まだ5話しか見てないのに。
ドラマのなかでは、その時代の条文が引用されて出てきたりする。今のものよりもっと明確に理不尽なその条文は、当時は当たり前のように考えられていたものなんだろう。法意識というものは、慣習から生まれる。当時の慣習は当時の風潮を作り、当時の法律を作った。それを「はて?」と思う人は寅子をはじめとして少数でもいたわけで、そんな人たちが戦ってくれたから今に至る。慣習を変える、意識を変えるっていうのは怪物を相手にすることのようですごく大変なんだけれど、それでも立ち向かうそのエネルギーや覚悟は素晴らしく眩しい。眩しいなって思わされる脚本と俳優の演技に引き込まれてしまう。
まだはじまったばかりで、私はいま第一週目を見終えたところ。これからどう展開されていくのか気になってどきどきしていて、そこには彼女のエネルギーや覚悟の眩しさが内包されている気がして、だから見続けているのだと思っている。
あと、朝ドラと同様に今年は大河をめっちゃくちゃ真面目に見てる!もう毎週超~~~楽しみにしていて、毎回「おもしろ~~!!!」と言いながら50分見終わったあとにはベッドにダイノジに倒れ込んでしまっている。
こちらも女性が主人公に据えられていて、彼女はまさにしなやかに、生きる時代の理不尽を彼女の武器をもって(知性で)生きて、世を変えていきたいと願っていて、すごくドラマティックに仕上がっていて本当におもしろい。藤原道長と紫式部が史実でどんな関係だったのかは神のみぞ知ることだけれど、ドラマのなかでは唯一無二のソウルメイトとして描かれている。どうしようもなく恋に落ちて、でも時代の理不尽は一緒にはいさせてくれなくて……。相手を想うからこそ、相手の一番の望みをかなえることが一番の愛の示し方。その覚悟。恋は人を変えるというけれど、恋が与えてくれるものは覚悟でしかなくて、人を変えるものこそがその覚悟なのだな。
本当に……おもしろくて……語彙力が……。まわりに見ている人が姉しかいなくしんどいのだけれど……!
物語というのは二歩先を示す、と好きな作家が言っていた。今期のNHKドラマにはたくさんの自分にとっての二歩先を与えてもらえそうですごくわくわくしている。
物語といえば、直近で見たい映画は『蛇の道』と『朽ちない桜』。どちらも6月公開だったかな。あと『国宝』も見たいし、夏に公開される野木さん脚本の『ラストマイル』もたのしみ。
最近読んで好きだった本は『ミトンとふびん』。何度も泣いて、三回繰り返して読んだ。
気になっている本は、恩田陸さんの『spring』。私は本屋さんをぶらぶら巡るのが好きで、たとえ積み本(読みたい本に登録している本)があったとしても、本屋巡りで偶然出会った本を先に読み始めてしまうので、実際にいつ読めるのかはわからないけれど。それと、『成瀬は天下を取りにいく』ももうかれこれ半年以上ずっと積み本にしている。本屋大賞ととったというので、そろそろ読みたいな。
アニメは最近あんまり見られていないのだけれど、忘却バッテリーは期待通りで良かった。原作が好きなので、丁寧に描いてくれたら嬉しいな。ギャグのテンポはアニメになると寒くなりがちだけどそこは安心信頼の宮野真守、ありがたい。OPはミセス、EDはマカロニえんぴつ。姉と私の好きなアーティストが担当してくれていて、もうすっごくありがたいよ~~と思いながら噛みしめた。どちらのアーティストも歌詞や言葉がいいので文字を追ってしまうけれど、わりと真逆の感性があるというか、陰と陽みたいな。でもどっちも実は陰だよね、みたいな……。そんな感じがしていてとっても好き。
近況はそんな感じかな……。いや他にもあるけど……。在宅勤務がなくなってしまい、毎日眠たいなと思いながら会社に行っている。桜が散って暑い季節がきたらと思うと恐ろしい。