混じり気のない無色

inaca
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ふとした瞬間に現れた、それはそれは、肌を突き刺すような痛み、その時に感じる憂鬱、されど、何故か希望を纏う、空気感染するそれは、人を、様々な路線へと導く、ある人は絶望と対峙し、ある人はただ毎日に祈りを捧げる、喜ぶ人もいれば、膝をついて、その運命を憎む者もいる

勝ちや負けを、一心不乱に競い合って、得られるものはたかが知れている、それを、予定調和の如く、どの時代でも、人は、まるで生命にインプットされたシステムとして、それが普遍性だと言わんばかりに、その空気を自分の一部と思い込んでいる節がある、空気感染は、常態化した、希望は偽りに過ぎない

水平線を眺めていると、波の輪郭と、空の青さが一つになって、こんな世界がこの世にあることの衝撃を受ける、蔓延る空気が、目の前の景色の、ただそこに広がっている景色を、異常だと認識する、本当であれば、僕らが生きている世界が異常であるのにも関わらず、だ、そこに見た景色は、人々の心を正常に導く、とんだ腐った世界だ、コーヒーを一口嗜む

テレビの奥では、世界が動いているように見える、ネットの世界では、何かが絶えず変化を繰り返しているように思える、それは事実だ、では、人々の心は、どこに向かっているのだろう、その変化の先に見える自己の姿は、本来の正しい自己の在り方なんだろうか、冬の冷たさは、コートを必要とする、では、僕に必要なものはなんであろう、それさえも曇ってしまった

梅の花が咲いている、意味もなく、季節毎の気温や湿度に、歯向かえもしなければ、妥協することもない、ただ、己の咲く時を待っている、それをただ繰り返していく、その美しさは、僕ら人間には勝てない植物の優位性だ、それを破壊する人間のエゴは、空気感染を自ら作り出した、君の絶望も、あなたの希望も、それら全てを、作り出した

無音の中で聴こえてきたもの、無音という音の静けさによる音、限りなくゼロに等しい音、感受するだけの意識を、僕らは持てない、ただそれはそこにあるのに

あなたは、草花をよく写真に収めていた、「この美麗さは、人間のエゴをうまく隠してくれると思うの、主張しない主張、ただ眺めていると、元気がもらえる、わたしも汚れているのね」

桜の季節だ、空気感染は、この世から無くなりはしない、ふと、思い立って、あなたがいた頃の思い出の地をめぐってみた、「君がそう言う時は、僕の心が洗われる時だよ、何故だか一つになれたような気がする、うまく説明は出来ない、ただ、君と一緒にいれることが幸福って事は、いつまでも変わらない」

シャッターは切れなかった