草原は光を反射して、網膜に眩しさを届ける。揺れる草花の立ちこめる香りに包まれた。ここはとある場所の名もない極ありふれた空き地。最も、それは誰かにとっての特別かもしれないが…。
笑顔を作ると心までもがウキウキとしてくるよ、と彼女は言った。それもそうだなあ、と欠伸をしながら答える。ねえ、ちゃんと聞いてないでしょ。彼女はニコニコと怒った。その矛盾が愛おしい。
この空き地は僕にとっての特別だ。過去の眩しさがそうさせる。ただ何もない広がった空間に、横長のベンチが一つあるだけだ。よくここのベンチで二人で話したっけ。青空を見ると、遠い記憶から貴方の声が聞こえてくるようで、少しの間だけ目を閉じてみた。
まつ毛が目元を覆う。俯いて何か考えことをする素振りが何故か好きだった。笑顔は無理に作ることができるから、無表情のあなたの隠されたあなたを見たような気がして、何だか胸がきゅっとなる。ブランコの左隣で何かを伝えようと彼女は無言になる。
明日、もし私が居なくなったらって考えたことある?
いや、ずっと一緒にいられると思ってる。
お気楽な人ね。
彼女はまたふふっと笑って、ブランコを漕ぎ出した。あれからどれくらいの年月が僕を支配しただろう。
ある晴れた日、飛行機雲だけが空を横断している。