物をなくした時、耳もとでハサミをチャキチャキしながら、「ハサミさん、〇〇はどこにあるか教えておくれ」と言うと、なくしたものが出てくるらしい。
息子は、充電ケーブルをなくして困っていました。家になければ塾だろう?探したよ、でも塾にはない、と言うんです。困りました。廃盤なのでもう売られていないんです。
そこで私は、藁にもすがる思いでハサミさんを召喚したのです。
それから2日後、私は塾に赴く用事が出来ました。そこで何気なく、先生にケーブルの件を聞いてみたのです。
「先生、ケーブルなんですけどこちらにありませんかね?息子に聞いても何だか曖昧で」
「あ、それでしたらありましたよ」
「え?そうなんですか?」
たまたま塾内を片付けているときに見つけたとのことで、テプラで名前を貼ってあったのも幸いでした。私は「良かった~」と安堵して、先生に礼を述べて帰路に着いたのです。
帰宅して、私は引き出しからあのハサミを取り出しました。もしも見つかったら、ちゃんとお礼をしなければならないからです。
「ハサミさん、ありました。ありがとう」と、ちょっと恥ずかしいから、誰にも聞かれないように、こそっと。
これは息子には内緒です。言えば何だか、ご利益が消えてしまいそうな気がするから。