緊急速報でパニック発作を起こした話

維枦八(いろはち)
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公開:2025/12/9

 買い替えたばかりのスマホ。緊急速報をオフにし忘れていた。

 僕は地震と、緊急速報の音が恐怖症レベルで苦手だ。地震の恐怖が、元々不気味に感じていた速報の音と強く結びついてしまい、今では音への恐怖が地震の恐怖に勝る状態だ。

 スマホの緊急速報はオフにすることで対処し(テレビは持ってないので問題なし)、地震のほうは少しずつ、パニック発作を起こすには至らないくらいまで克服していた。

 ちなみに、人が大勢いるような場所や屋外だと恐怖感は弱まる。恐怖の大きさは人の多さに反比例する。

 昨夜は、自宅に一人、電気を消した状態で、寝入り端のリラックスしている時間、突然の大きな警報音、地震。

 最悪の条件が揃っていた。

 僕の神経は一気に“命の危険”モードに入る。

 揺れが収まっても、体の震えと涙と過呼吸が止まらない。恐怖と不安と混乱で叫び出したいのを必死に堪える。

 過呼吸を落ち着けて、這うようにして薬のある場所に向かった(脚の震えとめまいでうまく歩けない)。幸い物理的な被害はなかったが、精神的な被害は大きかった。

 発作を起こしたあとは、神経が過敏になる。狭いところが怖くなったり、少し揺れただけで、心臓が痛いほどドキドキし、勝手に涙が溢れてくる。小さな物音にも驚いてしまう。それと、体がやたらと冷える。

 しっかり休養すれば3日ほどで回復するが、休養をサボると自律神経関連の不快な症状が次々と現れる。

 ゆっくりネット小説でも読みながら、神経を休めよう――と思っていた。

 しかし、地震対応でフラフラになって帰ってきたパートナーからの何気ない言葉で、僕を現実に繋ぎ止めていた糸が切れてしまう。普段なら軽く受け流せるくらいの言葉だ。パートナーは悪くない。冗談のつもりであっただろうし、普段なら笑いながら嫌味の一つでも返すところだ。ただ、今の僕にはそれが無理だった。

 クナイのように言葉が刺さり、その衝撃で糸が切れる。現実と夢の間のような空間に放り出された僕の精神は、ふわふわ、ゆらゆらと漂う。解離と健忘。

 寝込まなければならないパターンだ。心底面倒くさい奴だと思う反面、感受性や感性といった、繊細なセンサーを持ち続けるためなのだから仕方がないとも思う。これは愛おしい副作用なのだ。

 緊急速報の音は、もう一生聞きたくないなぁ。

 さあ、寝よう。昂ぶった神経が癒えたら、現実に戻ってこよう。おやすみ。