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「家族」

当たり前のようで、この世のあらゆる人間関係の中で、最も独特で奇妙な集合体。

他人と他人が集まってできている。外とは異なる特殊な結びつきによって。

この奇妙な感じ、血は繋がっているけれど、私という個人「以外」という点において、どこまでも「他人」ということ。一番近いのに、一番遠いということ。

不思議。どうして、わたしと、この人たちは、他の人間たちとも違う、こんなに奇妙な縁で繋がっているのだろう。どんな意味があるのだろう…。

もしも意味があったとしても、物質的な生き物であるうちにはおそらくわからない類のことなのかもと思うけれど、確かな事実として、父や母、祖母、祖父、そのまた両親、さらにそのまた両親ーーーと、この人たちの誰か一人でも欠けていたのなら、

「わたし」は、いま、ここに存在していないのだということ。

あなたとも出会っていないということ。

この世界のあらゆる物事、すてきなこと、かなしいこと、吐き気がするほど心がザワザワすること、美しいこと。そういったものに、わたしはいまのわたしとして、遭遇していないということ。

当たり前か。けれど、そんな当たり前のことが言葉にできないよ、不思議。

父と母と祖母と弟。この4人が、いま健在しているわたしの家族だ。

360度どの角度から見てもすき、なひとはいない。理解が難しいこと、言われてやられて嫌だったこと、ある。当たり前だ、それぞれの肩書きの前に、それぞれが単なる「人」なんだから。それぞれがそれぞれの世界の中で、悩んだり考えたり夢を見たりしながら生きている。

この人たちにとっての「わたし」にも、そういう部分がきっとあるだろう。

そんな単なる「人」同士が、不思議な縁で繋がりを持って、「人」と「人」が人の間に挟まりあって、人間として暮らしている。もう何万年もの間、そうやって、いのちを運んできている。

そう思うと、自分がいまここに生きていることや、父や母、祖母、祖父、弟、一緒に暮らした人間以外の動物たちの存在、いのちを、たまらなく、尊く思う。

こんなふうに感じられる「わたし」が、いまここで息をしていられて、そんなきっかけをこの広すぎる世界にぽん、と添えてくれた家族のことを、大事に、だいじに、思う。

あなたたちでなければ、結末は違ったんだ。有難う。ありがとう。

わたしも、この大きな大きな流れのなかに「いのちをつなぐもの」として、いつの日か入っていくのだろうか。わたしの中にも、あの海のような、宇宙のような、ブラックホールのような、計り知れない母性の種が存在しているのかもしれない。

感じれば感じるほど、ふしぎだ。日々の瑣末なことなど気にならないほど、このつながり自体がどこか遠く深い世界とつながっているんだ、きっと。