尊厳

irumerih
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インターネット上に書き物ができる場所が増えると,つい様子を見に行ってしまう.書くだけなら一人で書いていてもいいはずなのだけれど,やはり読まれたいという気持ちが出てくるのだろう.それはどこか不純なものでもあるような気がしつつ,とはいえ自分にとって書くことは,それ自体のナラデハ性を追求するものというよりは,どこか人や世界とのコミュニケーションを担うものなのだと考えた方が実際に近いのだろう.すこしおおげさだろうか.

すこし前にアーツアンドクラフツ運動についての展覧会を見た.社会主義運動との近さにおいてそれを考えたとき,一番印象に残ったのはその運動が自らの労働に尊厳を取り戻すためのものだったということだ.生産手段が資本家の手によって奪われ,純粋な労働力へと単純化されていく疎外の過程のなかで,労働者たちの抵抗のひとつのよりどころとなりえたのが「美」であったということは今となってはそれすらも牧歌的な話であるように思える.しかしながらそこに開かれる「価値」の複数性と,労働における尊厳の希求とはまっすぐ繋がっていて,「労働」が持ちうるほかのーー労働力と賃金の交換以外のーー可能性について考えることを余儀なくされる.労働は人生を彩るものでもありうる.ありえてほしい.働くこととの距離感を,いまだにはかりかねている.

@irumerih
credo quia absurdum