読書の話

伊佐名眸
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最近、しばらくぶりに本を読めるようになった。多分。今のところ。

鬱っぽくなってからなので、ざっと10年ぶりくらいになるかもしれない。以前は書店に通い詰める程度には活字が好きな人種だったので、本が読めなくなったのは正直アイデンティティ・クライシスに等しかった。そんな何かからの蘇生である。

最近はもっぱら自己分析に役立ちそうな本を読んでいる。発達障害とか、嗜好とか、ジェンダーとか。自分に関連があるものは読みやすい。まだ小説には手が伸びない。

話は変わるが、SFが好きだったりする。それもどちらかというと有機的な方の話が。有機的というのが正しい言葉かは分からないが、スペースオペラは少なくとも私の考える有機的SFではない。星新一、伊藤計劃、ケン・リュウ、テッド・チャンあたりが私の考える有機的SFの作家だ。好きな作家を挙げただけとも言う。

彼らの作品の特徴と私が考えているのが、既存の観念にメスを入れることだ。お前が愚直に信じているそれは本当に正しいものか?と問いかけられるのがたまらなく好きだ。

自己分析を行うと、自分との対話が発生する。私は(今の)私であることを認めていいのだろうか?と最近とみに考える。自己肯定感を高めよう!というのはよく聞くようになったが、果たしてそれの本当に意味するところはなんなのだろうか。正しくない自分ですら肯定することは悪徳ではないだろうか。正しいとはなんだろうか。

有機的SFで語られるモノは、案外と身近に存在するのだと気がついてきた。今の私がそれらを読んだ時に果たして何を考えるのか知りたいとは思うが、未だに積まれた本たちに手は伸びずにいる。