三寒四温日記

I2K文庫
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火曜日。仕事終わりにそのまま部署の飲み会。コロナ禍もあって3年間一度も開催されなかった大人数の会なので、知らん人たくさんいた。いまだ新人気分のわたしが同僚のことをよく知らないのはお察しだろうけど、わたしの上司も同じ部署に7年在籍している人に「はじめまして...」とか言っていて親近感が湧いた。この部署のいいところは、本当に他人に興味がある人が少ないところだ。ケータリングをとって立食パーティー形式だったのだけど、若手が準備を任されていた。そこで何が驚くべきって、結局「手伝おうか?」と声をかけてくれたのが派遣社員のみなさまと、社員がたった1人だったことたった。その他の人は他所でおしゃべりしているか、パソコン開いて作業しているかだった。その場にいるのに。これが男しかいない職場の縮図か、と思った。ケア労働をさせられるのはいつも大抵同じ立場の人たちだ。性別の問題でもなく人間性の問題なのかもしれないけど。この部署の悪いところは、本当に他人に興味がある人が少ないところだ。

水曜日。とても気持ちの良い快晴。昨夜の宴のせいで圧倒的に終わっていない仕事。と、いうことで6時出勤。こんなに早く会社に行ったことなかったので、この時間は表のゲートが閉まっていると初めて知った。朝早く家を出ると面白いこともある。いつも自転車で通りかかる公園では、たくさんのおじいさんがラジオ体操をしていた。一箇所に集まることなく、公演のあちら、こちらに散らばって。とても声の届かなそうなそんな距離で、みんな同じ動きをしている。そしてまだ、白木蓮が咲いていることにも気がついた。白木蓮が咲き始めて、美しいな、と思ったことが半年くらい前に思える。時空の歪み。会社近くの立ち食い蕎麦屋は朝の6時から賑わっていた。見たこともないドデカい土砂を積んだトラックが5台並んで路肩に止まっている。それを見張りながらドライバーたちが左手にどんぶり、右手に箸で蕎麦を食らっていた。労働の朝。天気がいいとそれだけで救われる。

木曜日。昨日5時間の会議があったせいで、その議事録を書くのに8時間かかった。そんなことあっていいのか?自動書き起こしも生成AIも全然頼りにならない。もっと早く、もっと沢山わたしから仕事を奪ってくれ......と思ってばかりいる。

金曜日。雨。悲しみの雨。自転車で通勤できないと、電車に乗らなくてはならない。この会社で働き始めてからというものの、満員電車が本当に嫌いだ。昼過ぎから晴れてきたので、帰りは自転車を借りて映画館に寄る。年度末最終日の金曜日、みんな飲み会で早く帰るので、さもわたしも飲み会かのような風情で離席したけど、向かうは『オッペンハイマー』。次から次へとやってくる映画の公開日に追われながら生きている。帰り道にはフリースなんて着ていられないくらいあったかくなっていた。初夏の夕方を感じる。

土曜日。いい天気!朝からいい天気!アラームかけずとも6時代に目が覚める。友達と花見ピクニックのつもりで家を出る。ちょっとビビって秋物のコート羽織ったけど要らなかった。完全に初夏。一部の樹種を除いて桜はまだ咲いていなかった。桜は咲いていないのに初夏。サンドイッチを買って、だらだらとボードゲームをする。野外ボードゲームにぴったりの無風。ついこの前まで、好きな友達と集まってゲームするくらいならおしゃべりして相手のことを知りたい、と思っていたけれど、今はちょっと違う。意味のある会話とか芯食った話とか、そういうものだけに価値があるわけではない。なんとなく一緒に過ごした時間、記憶にもやわらかい連帯がある。面白いコミュニケーションだけじゃなくて、一緒にいていやじゃないとか一緒にいてラクとか、そういうものも代え難い価値なのだ。

日曜日。今日も晴れている。Tシャツで良さそうなくらいの、陽気。いつも仲良くお話ししてくれる大好きな服屋さんで買った白い春用のパンツをおろす。晴れているので、映画を観に行く。晴れてなくても映画観に行くけど、晴れていると尚更映画日和な気がする。こういう天気が、あと半年は続けはいいのに、と思う。今のわたしにはもっともっと夏が暑いことを想像できない。30回近く夏がやってきても、また忘れてしまう。

@itk
懲りずに日記 体裁を整えることより大事なことがある