ランチにお粥を食べた。最初はどうってことないのに、だんだんと身体がぽかぽかしてくる。量も多くないのに、なんでかほっこり胃が落ち着く。そして量が多くないからか、堅苦しい平均的なサラリーマンの姿がほとんどなく、他愛もないおばちゃんトークだけが響くこの中華料理屋さんがわたしは大好きだ。お店のおかみも「ゆっくりしてってね~」といつも声をかけてくれる。このせわしない東京の、このド混雑ランチタイムに、こんなに肩肘張らずにのんびりできるところはこのお店とピクニックしかない。特大の癒しである。
お粥を食べながら、エッセイ界でもっとも好きなエッセイを読み直す。たぶん持っていた本は実家に置いてきてしまったので、この間インターネットで中古で買いなおしたのだ(たぶんもう中古しかない)。カナダをロードトリップしていて思い出したのは弱冠24歳でロードトリップ中に事故で天に召された彼女のことだった。もう20年も前の出来事が書かれているのに、今もずっと息遣いが生きている。「政治のことなんてほとんどなにもわからない」と言いながら、デモに立ち、子どものことが別に好きなわけではないと言いながら、待機児童の問題に直面してベビーシッターのバイトをしていた。その謙虚さよ。
いつもにこにこと迎えてくれるお粥屋さんの店主にも救われているし、見たことも会ったこともない、気づいたら年齢も追い越してしまった若い彼女にも背中を押される。連帯は近くても遠くてもよいのだ。