
ここでは、VCにEIRで少しだけ居た後に、20代前半でスタートアップを創業して失敗したその反省と学びについて書いてみました(自分の学びとするために...)
聞かざるは之を聞くに若かず、之を聞くは之を見るに若かず、之を見るは之を知るに若かず、之を知るは之を行うに若かず。学は之を行うに至りて止む。
『荀子』儒效篇
(⚠️注意:メモ書き的になっているので、読みづらいです!あと随時更新します)
<前提:失敗から学ぶ方法>
基本的に、失敗から学ぶとは以下のプロセスを踏みます。
[学習プロセス]
①失敗を経験する:何かに挑戦して失敗して心が傷付く
↓
②それを抽象化する:失敗した原因(=自分に関する)を分析して、自分の間違いや・実力不足を認識する
↓
③次に活かす:自分に足りない部分を埋める為に努力する、同じ失敗の仕方を繰り返さないようにする
成功することで、成功の定石(何が成功のためのカギか?)が体験とともに学習されるので、別の舞台でも高い確率で成功しやすい。
一方で、失敗をすると無知の知(自分には何が足りないのか?)が分かるので、同じような過ちを繰り返しづらかったり、自分が成長するための機会になりやすい。
ただ、失敗を抽象化して "自分の血肉" としなければ、その失敗はマイナスにしかならない。
(※失敗から学ぶことが大事なのは分かっていても、実際に失敗から学ぶことは難しい)
以下からは、上記の学習プロセスに沿りながら、スタートアップの失敗について振り返って行きます。
[目次]
失敗の経験:何をスタートアップとして失敗したのか?
失敗の抽象化:何を失敗して、その原因はなんなのか?
失敗を活かす:次に起業するときには?自分に足りないもの&それの埋め方
備忘録:当時の間違った認識
まとめ:「何を学んだのですか?、何を得たのですか?」
1. 失敗の経験:何をスタートアップとして失敗したのか?
ここでは、スタートアップでの失敗の経験について書いていきます。

[⇧noteのURLで、当時のピボットした後の事業仮説を共有しておきます(興味があれば...)]
スタートアップの始まりから失敗までを端的に振り返ると
[時系列]
起業するのが目的で、VCにEIRで入る
VCから出資を受けて起業する
2-3日考えて "3Dアバター" を起業テーマにする
何度か製品ピポッドする(※なんか違うの繰り返し)
資金調達を考えて動くが、自分自身でも納得できない(※VCへの返信を途中で辞めたりした、やる気も無くなり)
会社の銀行残高がなくなる
最後に、スタートアップを諦める

スタートアップの一般的なステージで言うと、シード期のMVP→PMFまでの一番最初の壁を達成できなかった。
実際に、3Dアバター or メタバース系でプロダクトを考え作ったり試行錯誤はしたが、リリースして十分に製品仮説を検証するところまで上手く進めなかった(当時は十分な開発力も無かった...)
当時の失敗としては、大きく以下の2つ
①MVP→PMFまで達成できなかった(学習力)
②会社を畳む決断が遅かった(撤退力)
2. 失敗の抽象化:何を失敗して、その原因はなんなのか?
ここからは、上記の2つの失敗の原因について深掘りしていきます。
①MVP→PMFまで達成できなかった(学習力)
なぜ、PMFできた製品やビジネスを構築できなかったのか?
まず初めに20代前半だった当時の僕には経験・知識・スキルなど何もなく、半ば勢いでスタートアップを始めました。
だから、やりながら"How"を学んでいく必要がありました(学生起業などの多くはそうだと思います)
しかし、当時の自分にはそれが全くできませんでした。努力が正しい方向に向かっているかを客観的に意見してもらえる環境を自ら作れませんでした。
[成功の方程式]
インプット(Do: 努力や行動量)× 変換効率(How: 知識や経験やセンス)= アウトプット
<👿変換効率(How: 知識や経験やセンス)での失敗>
先人や周囲からフィードバックをもらう機会を作れなかった: 自分の虚栄心が傷つくのを恐れ、適切なフィードバックをもらえなかった。
シリコンパレーの先行事例を模倣しなかった: 米国の先行事例から学べず、模倣=悪と考え独創的な製品アイデアに拘ってしまった。
座学で何とかいけると思っていた: 先輩の起業家から学ぶのを面倒に感じて、noteやTwitterから方法論を学ぶだけで十分だと驕っていた。
あとは、正直に言うと根本的に "Do: 努力や行動量" の部分が圧倒的に足りてなかったと反省しています。最後の方はほぼ惰性になっていました。
当時は起業するのが目的で(それ自体が悪くはないけど..)、事業成長の先行きが自分の中で見えなくなっていくと、何のためにやっているのかの意味が徐々に見出せなくなっていきました。
ある種、「覚悟」が足りなかったのかも知れない。
そして当初の起業テーマを大きく変えれず、小手先の意味のないピボットを繰り返すだけでした。
<👿インプット(Do: 努力や行動量)での失敗>
バリュープロポジションがなかった: 誰の何の課題を解決するのかが明確で無く指針がブレまくっていた。ブロックチェーンや生成AI、メタバースなどの言葉に踊らされていた。
目的意識もなく資金調達をした: Pre-Seedで考えずに出資を受けてしまって、起業の目的も明確にないまま後戻りできない道に進んでしまった。
起業テーマの選び方が間違っていた: 自分のアイデンティティ(原体験や趣味)をベースに考えてしまって、商売の視点が欠けていた。
儲かるアイデアでなかった: メタバース系はRobloxでも赤字状態で、利益が上げずらい商売だった。
技術力・開発力がなかった: toC向けは飽和しているので最先端の技術(UGC技術やクラウドゲーミング)での差別化が必要だと思い、それを軸に製品を作ろうとしたが、それを実現できるだけの技術力・開発力がなかった。(枯れた技術の水平思考が大事)
なんかDoとHowの部分が混じってるけどいいや...
とりあえず、失敗の原因をざっくり書いてみました。
失敗の原因をまとめると(根本部分)
🎯"プライド(≒自分が傷つくことへの恐れ)を手放して、先人や周囲からのフィードバックを受け止め、自分を正しく認識(無知の知を知る)、自己成長することが出来なかった" だから失敗したと思っています。
起業テーマの選び方などの知識不足や目的不足もあったけど、それを自覚して改善するためののフィードバック機会を作れなかったのが根本の失敗原因だと思っています。
②会社を畳む決断が遅かった(撤退力)
なぜ、会社を辞めるという決断が遅い(=適切なタイミング)で出来なかったのか?
まず、物事の終わり方には大きく2種類あります。
損切り:自分で判断する強制終了(例:事業の転換 or 会社の清算)
足切り:早い段階での外部からの強制終了(例:会社員のクビ or スポーツ選手の引退)
起業家の場合は、スポーツ選手や芸人とは違い自分自身で強制終了の決断をしないといけません。
しかし、資金調達が上手くいかず不安定な感情のときに冷静に合理的な意思決定(=正しい損切り)はとても難しいです。
とくにスタートアップの業界では、"起業家にはGrid(粘り強さ)が大事" や "Airbnbは多重債務から大成功した" などが確証バイアス(損失回避や希望的観測)になって、正しい判断ができないことが多いです。
僕自身の失敗を振り返ってみても、「感情(いや、何とかなるはずだ etc...)」が確証バイアスとなって、正しい判断ができなかったなと後悔しています。
あとは、スタートアップは99.9%の参加者が死ぬゲームであるのに、その失敗の可能性を頭では理解していても、心ではその確率論を受け入れていなかったのも失敗の原因だったと思っています。
失敗の原因をまとめると(根本部分)
🎯"事業撤退の判断を「ルール」ではなく「感情」で判断しようとして、合理的な判断が出来なかった" だから失敗したと思っています。
次に何かに挑戦するときには、「感情」ではなく「ルール化」によって撤退の判断するようにしないといけないと思っています。
3. 失敗を活かす:次に起業するときには?
3-1. 失敗を活かす(実践編)
[①MVP→PMFまで達成できなかった(学習力)]
プライド(≒自分が傷つくことへの恐れ)を手放して、先人や周囲からのフィードバックを受け止め、自分を正しく認識して、自己成長できる環境をつくる(フィードバック力をつける)
[②会社を畳む決断が遅かった(撤退力)]
次に挑戦するときには、「感情」ではなく「ルール化」によって撤退の判断する(撤退力をつける)
今真っ先にできるのは、先人や周囲からのフィードバックをもらえる環境を作る。
[⬇︎2025年前半の最重要の目標]
『🎯本気のフィードバックをくれる尊敬すべき先人を1人でもいいからメンターにつける(2-3人が目標)』
為末大(元陸上選手)
3-2. 失敗を活かす(次に起業するなら)
今すぐ起業したいと思っていないが、失敗からの学びを基にして、次に起業するときには、どんなアプローチをとるかを考えてみました(大枠だけど)
[前提方針]
起業は目的でなく手段である。起業する前に、まずは登るべき山や勝ち筋などを他で本業で働きながら数ヶ月~半年(週末に)かけて考える。
VC以外の資金調達の手段(国からの助成金 ・公庫、商工中金の長期融資)を最初に検討する。
以下が僕が考える具体的なスタートアップとしての改善策です⇩
[①次に起業するなら?(製品開発編)]
起業アイデアを徹底的に検証する(事業発見型)
最初の失敗:とりあえず起業して、自分のアイデンティティ(原体験や趣味)を基にして2-3日でアイデアを考えた。
次での改善:すぐに起業せずに、事業機会の発見を軸にして他で働きながら数ヶ月~半年(週末に)かけてアイデアを考え、市場ニーズを十分に検証する。
スケーラビリティと収益性の高いビジネスモデルを選ぶ
最初の失敗:メタバース系は、運用コストが高く、利益率が非常に低かった(成功事例のRobloxですら赤字)
次での改善:運用コストや利益率に配慮して、ビジネスモデルを考える。
バリュープロポジションを最初期につくる
最初の失敗:toC向けだから、課題解決など必要ないと思っていた。
次での改善:すべての事業は課題解決から始まるので、day1からバリュープロポジションに集中する。
製品のコアな部分ではオープンソースの技術をつかう
最初の失敗:Unreal EngineやUnityなど既存のゲームエンジンを元にUGCゲームを作ろうとして、APIの利用規約などの壁にぶつかってしまった(ソースコードを改変不可だったり)
次での改善:製品のコアな部分では、オープンソースの技術を使う。
Bill GueryのDeepSeekがMITライセンスを上手く活用して上手く行った発言と通じる。(https://x.com/bgurley/status/1884695810799263977)
[②次に起業するなら?(経営編)]
撤退ラインをルール化する
最初の失敗:何も考えずに勇気だけで始めてしまった。
次での改善:day1から撤退ラインをルール化する。
毎週 or 毎月の事業進捗報告
最初の失敗:スタートアップに事業計画などは邪魔だと思っていた。
次での改善:最初から事業計画をつくり、銀行残高と一緒に、事業進捗を報告する体制をつくる(有安さんのを真似る、ランウェイ大事)
経験者からの助言を積極的に求める
最初の失敗:経験が浅い中で、自分たちだけで意思決定を行っていた。
次での改善:経験者をメンターとして、自分の事業や努力の方向性に対して客観的にフィードバックをもらえるようにする。
初めての起業だったので、見栄や外聞を気にすることが多かったです。
AIやブロックチェーンなど流行りの言葉に惑わされていました。
2回目の起業では、チーム、投資家、顧客など、あらゆる面で「真実の追求」を重視してシンプルに顧客価値の提供にフォーカスしたい。
4. 備忘録:当時の間違った考え
ここでは、スタートアップを起業したときには、気付けていなかった点(間違った認識)について備忘録としてまとめてみました。
前章に少し+αした内容になります。
[目次]
スタートアップも中小企業も、社会に価値を提供する手段でしかない
スタートアップは、選択肢が縛られる「制約と誓約」
ピボットより会社を畳む方が正しい場合が多い(意思決定のROI)
起業しない意思決定もまた正しい
起業家アイデンティティ型 vs 事業機会発見型:どちらも正しい
SFプロトタイピングには注意しよう(あなたは発明家ではない)
スタートアップは商売(特別ではない)
①スタートアップも中小企業も、社会に価値を提供する手段「箱」でしかない

スタートアップの世界はキラキラしていて、その背景にある本質的な部分(会社の目的など...)について見えずらい。
株式市場:会社の株式を売り買いする場
↓
時価総額/株式価値:会社が将来生み出すキャッシュフロー(≒利益)から逆算して決定される
↓
会社の利益:その会社の製品やサービスの提供価値によって利益が決定される(誰にも価値がないものだと売れない)
↓
会社の目的:利益を得るために、社会(=企業や人)に対して価値を提供するために活動する
スタートアップであろうが中小企業であろうが、根本的には "会社" という箱であり目的(=社会に価値を提供して利益を得るために頑張る!)はどちらも同じです。
ただ、その目的を達成するため手段(レバレッジ方法)が、VCからのエクティ出資なのか銀行からの融資なのかの違いしかありません。
(※スタートアップはかっこよく見えるが、実際に日本の文化的な豊かさや技術的な優位性などは、地元の中小企業が支えていることが多い)
②スタートアップは、選択肢が縛られる「制約と誓約」

(定義:スタートアップを始めること = VCからの外部出資を受けること)
VCからエクイティで資金を調達する場合は、投資家に対してリターンを返す責任が生まれてしまいます。これは銀行からの借り入れで起業することとは大きく違います。
前提:7-10年以内に会社をエグジット(IPOかM&A)させないといけない
シード:20倍(期待値), 7年-10年
アーリー:10-20倍(期待値), 5年-7年
ミドル:5-10倍(期待値), 3年-5年
レイター:5倍(期待値)
つまり、起業家がVCから調達してしまったら、その期待値に応える必要が出てくるため、起業家が取れる選択肢(例: どの起業テーマで始めるかなど etc...)に制限がかかってしまいます。
VCから資金調達したら、短期間で大きくスケールする可能性がある事業しか起業家としては選択することができません。
僕のイメージでは選択肢が100分の1になる感じ。
(※VCからの調達は融資と違って、資本制作の都合で後戻りできない不可逆な意思決定なので注意が必要)
ハイリスクで失敗する可能性は高いけど、解かないといけない課題(銀行の融資では対応が難しい)に対して挑戦しようとする際に、リスクマネーとしてVCから出資を受けるという考え方が、僕としては基本だと思っています。
③ピボットより会社を畳む方が正しい場合が多い(意思決定のROI)

スタートアップの世界では、ピボットを過度に信奉としている部分があると思います(少なくとも僕はそう思っていました)
もちろん、どんなスタートアップであれ大なり小なり複数のピボットを繰り返しますし、ピボットは企業成長する上で必要不可欠なものだとも思います。
[スタートアップのピボットの種類]
会社を続ける上で、この事業を続ける(語られる)
会社を続ける上で、この事業から転換する(語られる)
もう会社を畳む(語られない)
多くのピボットに関するnoteとかでも、1と2の解説や考察はしても、3の会社を畳むという選択肢については、ほとんど触れられません。
ピボットとは事業が順調に進んでいない時に、意思決定をするものであり、そこには会社を畳むという第3の選択肢が常に存在します。
スタートアップの世界にはピボットして成功した事例が沢山あり、それが過度に語られがちです(成功事例:InstagramやSlack、YouTubeなど...)
しかし、それが希望的観測(確証バイアス)となって、本来はここで会社を畳むべきタイミングなのに適切に意思決定ができずに、人生の時間を無駄に過ごしてしまうことがあると思います(←僕はそうだった)
人生の時間(リソース)を一番期待値が高い場所に投資するべき
個人的には、事業が上手くいっていない不安定な感情のときに冷静な判断は難しいので、起業した最初にある程度は "会社を畳む基準(撤退ルール)" を決めて、投資家の人に事前 or 定期的に言っておくと良いと思っています。
④"起業しない"意思決定もまた正しい

よくスタートアップ界隈にいると、以下のようなことが皮肉としてよく言われたりします。(#起業しろ)
学生時代に「いつか俺も起業する!」と意気込んでた(今思い出せる)意識高い友達10人ぐらいは結局、起業しなかった。そのうち3人は今もしたいと言ってるけどしてない。
→ 当時の僕も "いつか起業しようと考えている人はダサい" という根拠のないバイアスに囚われていました。
しかし、起業でも会社員でも、それらは全て自分自身の目的を達成するための手段にしか過ぎません。
(例えば、大きな金額を動かして何か大きなプロジェクトをしたいのであれば、起業するよりも大企業に入る方が良いでしょう(予算や人材も豊富だし...))
人生における目的を達成するために、起業よりも企業人の方が手段として適切だと考えれば、それが意思決定においては正しいと思います。
"起業=1つの手段" である根本的な前提を忘れないことが大切です。
⑤起業家アイデンティティ型 vs 事業機会発見型:どちらも正しい

VCの過剰な宣伝文句の影響?で、スタートアップの起業家は、Why you、Founder Market Fitなどの「起業家のアイデンティティ」の部分にこだわり過ぎていると思っている(少なくとも僕はめちゃ影響されてた)
[①起業家アイデンティティ型とは?(ZOZO前澤さん)]
自分の原体験:ものすごく不便な思いをしたとか、ものすごく惹かれたとか。例:ロボット義足開発で起業
自分の趣味:長年ハマってきた趣味や、好きなもの・ことに関すること。例:漫画専門のオークションサイトで起業
自分の専門性:長年取り組んで、没頭してきた学問・仕事のテーマ。例:水素の研究成果を活かして起業
メリット:自分ごと化しやすい、困難を乗り越えやすい
デメリット:儲けづらいテーマになりやすい
→ 僕は完全にこっちだった(僕自身は良くない選択だったと思っている)
(引用:事業テーマ選びと起業家のアイデンティティ)
[②事業機会発見型とは?(CyberAgent藤田さん)]
市場のニーズ:シリコンバレーでの成功事例を踏まえて。例:日本版ライドシェアで起業
市場/技術のトレンド:スタートアップ系の雑誌で特集されている内容を参考にして。例:a16zのレポートを参考にして、バーティカルAIエージェントで起業
メリット:市場の隙間を捉えやすい、儲けやすい
デメリット:上手くいかないと起業家が折れやすい
(引用:事業テーマ選びと起業家のアイデンティティ)
もちろん、どちらが正解ということはないと思います(各々に成功した事例があるので)
人生経験が短く、専門性なんてない、若い人が起業するときには "事業発見型" のテーマ探しが良い、僕が次に起業するときにはこの型で始めるかもなとは思っています。
個人的には、起業家のアイデンティティ(原体験や信念 etc..)を軸にして事業を始めると、ピポッドの意思決定において確証バイアス(サンクコストや損失回避 etc...)に影響されやすいと思っています。
※補足として、“Why us?”なぜ自分達はその市場の中で勝っていけるかの回答を持っておくことは重要です(us≠you:チームとして)
⑥SFプロトタイピングは注意しよう(あなたは発明家ではない)

(⇧僕のKindleの画面:SF小説を読んで製品開発に応用しようとしていた)
SFプロトタイピング(≒SF思考)とは、サイエンス・フィクション的な発想で未来を想像して、そこから逆算して今の製品開発などに役立てる思考アプローチです。
MITでは「Twelve Tomorrows」などで、研究者とSF作家がコラボレーションして、実際の研究に応用しようとしてたりします。
AIの登場によってなのか、最近になって日本のスタートアップの世界でも聞くことも多くなりました。
しかし、注意しないといけないのは、あなたは発明家でも研究者でもないということです(役割が違います)
[起業家の役割]
①インベンション(発明):これまでになかった新しい技術やアイデアを創造すること
↓
②イノベーション(革新):新しい技術を社会に実装して一般化させること
「イノベーションを起こして、社会やユーザーに対して新しい価値を差分として生み出し、その差分だけお金を貰う(起業家の仕事)」
ライト兄弟が飛行機を発明したけど、国をまたいで飛行機で旅行することを一般化させたのはボーイング(Boeingの創業者)です。
起業家が目指すべきなのは、ライト兄弟ではなくボーイングです。
SFプロトタイピングは基本的には、イノベーションではなく科学者やアカデミア向きのアプローチだと思うので、起業家としては注意が必要です(僕の勝手な考えだけど)
イーロンマスクやジェフベゾスがSF小説をよく読むからと言って、SF小説を読めば彼らのようにビジネスとして成功できるわけではないです。
実際に、僕は有名なSF作家のアーサー・C・クラーク「過ぎ去りし日々の光」を読んで、そこに登場する『ワームカム(時間や空間を超えて任意の場所や時間の映像をリアルタイムで観察できる装置)』から発想を得てプロダクトを作って失敗したりしました。
[⇧ほぼ余談だけど、実際の製品]
小説の内容「ワームカムの登場によって個人の秘密や私生活が容易に覗かれる、社会全体が "覗き屋" 的な文化に変わった」
↓
僕「Zenlyで友達と位置情報を共有する時代がきた、メタバース時代には友達とスマホやVRで何を見ているかをリアルタイムで共有する時代が来る」
↓
位置情報の共有は手軽だけど、画面の共有は手間がかかる(電池の消費もあるし)、ゲーム実況するとかでないなら画面共有する動機がそもそもない
↓
そして失敗する(単なるバカ)
AIや量子コンピューターなどの登場により、フィクションがファクトになる時代において、昔に比べてよりSF思考?の役割や重要性が増して来ると思います(僕もSF好きですが..)
だからこそ、SF思考の背景にある「技術的可能性」や「顧客ニーズ」の存在を忘れず、自分たちが発明ではなくイノベーションを起こすのが役割であることを忘れないことが重要でだと思っています。
⑦スタートアップは商売(特別ではない)

スタートアップの世界にいると忘れがちだが、僕たちは商売をしている(学者や研究者ではない)
「人や社会の課題を見つけて解決することで、差分=価値を提供することで、お金を頂く」
スモールビジネスも1兆円のスタートアップも本質的には商売という点で一緒である。
「未来の産業を作る」「世界を救う」という言葉よりも、売上や利益ときちんと向き合うのが大事です。
僕はスティーブ・ジョブズの映画やThink DifferentのCMを何度も見て、スタートアップは自己表現≒アートだと思い、商売から逃げていました(勘違いジョブズになっていました)
「会社が利益出してる ≒ 会社が価値出してる」
→ 売上/利益の長期的な最大化を目指せば、自ずと顧客への提供価値へと向かう。
5. まとめ:「何を学んだのですか?、何を得たのですか?」
最後に、あなたは失敗から何を学んだのとか問われれば、僕は以下のように答えます。
[失敗から何を学んだのか?]
プライドを手放し、他者からのフィードバックに耳を傾けることの重要性
自分の未熟さを認め、プライドを捨て、積極的に先人から学び続ける姿勢が成長には不可欠だと学びました。
感情ではなく、事前に定めたルールに基づいて撤退の判断を下すことの重要性
事業の状況が悪化した際に、希望的観測に囚われず、合理的な判断するために事前に徹底ルールを設けることが大事だと学びました。
etc...(それ以外も沢山あるな)
[メンタルモデル(考え方)]
→ スタートアップ失敗の経験から獲得したメンタルモデル
結果よりプロセスを重視(Process over outcome)
結果を最適化しようとするが、結果は5-10年後にやってくるもの、プロセスそのものにフォーカスする発想。
スタートアップだと、目の前の事業仮説の検証プロセスの最適化にフォーカスする。
バーベル戦略(Barbell Effect)
ハイリスク・ハイリターンな活動とローリスク・安定的な活動を組み合わせる発想。
スタートアップだと、副業しながら事業アイデアを考えたり、day1から撤退プランを構築する。
振り返りと反復(Reflect and Iterate)
週単位や月単位で定期的に自分の行動や成果を振り返り、そこから学んで改善する発想。
スタートアップだと、事業計画や毎週の達成項目を明確化する。
余談ですけど、逆に一番良かった意思決定は「PMFするまでに、規模を拡大しなかった(金がなかったのもあるけど)」ことだと思っています。
↑これは数少ない正しい意思決定だったなと思っています。
[参考資料]
~追記~
"失敗から学ぶ" のは難しい
何度も思ったけど、改めて自分の商売人としての実力不足がひどい
若気の至りという言葉で逃げたいけど、それにしても単純に自分が愚かだった部分が多い(それに気付けただけマシだけど...)
自分自身についての自己理解(虚栄心やコンプレックス etc..)の欠如が、スタートアップをやる上での大きなマイネスに繋がった
ただ、アニマルスピリッツ(自らの手でまだ世の中にない事業や価値を生み出そうとする衝動)な部分は今も変わってないし、今回の失敗から学んだことを活かしてもう一度挑戦をしたいという思いもある。
『自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ』
(リクルート創業者 江副浩正)
最初の起業は、根拠のない自信から
次に起業するときは、根拠のある自信から。
あと、ユニコーンなど夢を語る前に、営業利益10億円への道筋を仔細に固められるかの方が遥かに大事(商売人マインド)

2025年8月20日、小澤隆生さんと田中溪さんのNewsPicksでの対談を拝見しました。 その中で小澤さんが「上手くいく人は逃げ足が早い。孫さんはそれが天才的だ」とおっしゃっていて、自分に足りなかったのはまさにその部分だと感じました。
「逃げ足の遅さ = 逃げ場所のなさ」
僕は早く失敗することができませんでした。その背景には、学歴や金銭面、社会的な実績といった“帰れる場所”が自分には不足していたことがあったのだと改めて思いました。(逃げ場所をどう設計するか?)