CQRSの一貫性・可用性・スケーラビリティについて

CQRS(Command Query Responsibility Segregation、コマンド・クエリー責任分離)は、現代のアプリケーション設計において重要な役割を果たしているが、今回はよく議論になる一貫性・可用性・スケーラビリティについて書いてみよう。文章のみの説明なので、非常にイメージしづらいかもしれないけど。

一貫性と可用性の評価軸

CQRSが一貫性と可用性を重要な評価軸として採用する理由は、CAP定理に基づいている。分散システムでは、ネットワークの分断や障害が発生した場合、一貫性と可用性の間でトレードオフが生じることが避けられない。CQRSはこのトレードオフを巧みに活用し、書き込みモデルで一貫性を、読み込みモデルで可用性を重視することで、最適なバランスを見つけることを目指している。

一貫性への影響

イベントソーシングを伴わないシンプルなCQRSでは、非CQRSベースのシステムと同様の一貫性が保証される。しかし、イベントソーシングを組み合わせると、読み込みモデルと書き込みモデルで一貫性のレベルを独立して制御することになる。これによりシステムの柔軟性が向上する。

書き込みモデルでは、システムの現在の状態に基づいて意思決定や計算を行うため、強い一貫性が求められる。一方で、読み込みモデルでは、最新の状態ではなくても十分な場合が多く、結果整合性が適用される。これにより、パフォーマンスと応答速度の向上が期待できる。

可用性への影響

CQRS/ESは、可用性にも重要な影響を及ぼす。書き込みモデルはしばしば強い一貫性を必要とするが、読み込みモデルの結果整合性により、高い可用性を実現できる。障害発生時に書き込みを一時停止しても、読み込み操作は継続可能で、システムの全面的なダウンを避けられる。

読み込みモデルのキャッシュやレプリケーション機能を活用することで、障害発生時でもサービスの可用性を維持し、ユーザーへの影響を最小限に抑えることが可能だ。

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これらの一貫性と可用性の考え方は、典型的なRDBの1台ライター/N台リードレプリカ構成でも同じように考えるはずだ。なぜならば、どちらもCAP定理に基づくトレードオフが生じるからだ。

スケーラビリティへの影響

CQRS/ESでは、読み込みモデルと書き込みモデルを分離して独立にスケールさせることができる。多くのアプリケーションが読み込み重視であるため、読み込みモデルはキャッシュやレプリケーションを活用して高いスケーラビリティを実現する。

異なるマイクロサービスが異なるプロジェクションをホストすることで、特定のクエリに特化したサービスを展開し、システム全体の負荷を効率的に分散でできる。書き込みモデルに関しても、シャーディングや他の分散技術を活用することで、スケーラビリティを担保できる。

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CQRSは、一貫性・可用性・スケーラビリティという重要なアーキテクチャ要素に対して、高度な制御と柔軟性を提供する。開発者はシステムのニーズに応じて最適な戦略を選択し、効率的かつ効果的にシステムを構築できる。CQRS/ESは、高性能で堅牢なアプリケーションを構築するための鍵となるアーキテクチャパターンであり、現代の複雑で要求の高いアプリケーションのニーズに応えるための重要なソリューションの一つだ。

次はCQRSのコストについて書いてみよう。

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