今年のゴールデンウィークはいつもの名古屋経由ではなく、富山を経由したルートを使ってみることにした。北陸新幹線が延伸したとのニュースがテレビで熱く取り上げられており、自分も使ってみたかったからだ。富山から特急ひだに乗り換えて南下するので、延伸した金沢以降とはまったく無縁なのだが。
東京駅構内のお店でホタルイカとふきのとうのパスタを食べ、お土産のグーテデロワを買ってから出発。新幹線かがやき(指定席)に乗って一路富山駅まで。何年か前に長野県上田駅まで行ったことがあるのだが、その時使った新幹線はかがやきだったらはくたかだったか……覚えていない。えきねっとの予約メールを漁ったら分かるだろうか。
東海道新幹線ならプライベートでも仕事でも乗っているので、窓からの景色は見慣れている。北陸新幹線の車窓からの景色は全く違うもので、見る目を楽しませてくれた。
富山駅近くまで来ると、立山連峰が窓から姿を表した。「山が立つ」と書いて立山連峰だが、まさにその名を表した佇まい。山と海とを後(しりえ)に前にして育つ富山県民は、故郷を離れた後もこの風景を遠きにありて思うことだろう。
スケジュールでは、富山駅を降りてから次の電車まで2時間半ほど余裕を持たせていた。初上陸の富山を少しだけ味わいたかったためだ。とはいえ何も考えていなかったため、駅北の広場でたこ焼き・しそマヨ味(6個入り500円)を食べながらGoogleマップを探すと、富山県美術館が目に入った。今の展示はエッシャー展だというではないか。親水公園を通り抜けて徒歩で向かった。エッシャーは騙し絵や幾何学的なパターンが有名な画家(版画家?)である。19世紀の工業化し忙しなくなっていく社会と新しい価値観、人間性を置き去りにするような科学の進歩を目の当たりした芸術家たちの運動(アール・ヌーヴォー)の流れを組む人だと認識している。(間違っていたらごめんなさい)次の電車までの時間を意識しながら早足で見させてもらったが、幾何学的なモチーフを組み合わせて美しいデザインとなっている作品が数多くあった。特別展恒例の関連グッズショップでは、ポストカードや騙し絵の本が並んでいた。残念ながらゲーデル・エッシャー・バッハは置いていなかった(こういう場に置くには値段が高すぎるのか、そもそも手に入りにくいのか?)。アンディ・ウォーホルのキャンベルのスープ缶のマグネットが(なぜか)あったので購入し、急いで駅に戻る。
自分が特急ひだに乗るときはいつも空席が目立つので、今回は指定席ではなく自由席にしてみた。予想は当たり、となりに誰も座らないくらいの空き具合。席の2割か3割しか埋まっていないのでは…?先日車両が新調されて座り心地の良くなったシートでゆったり過ごすことができた。
今、名古屋行きの特急ひだに乗りながらこのノートを書いている。正直帰省とか面倒だし、1年に1回でいいんじゃないかと思う。ニコニコ超会議とか行ってみたかったのに帰省するから行けなかった。が、今の私は遠くに就職し、転職しない限り地元に帰ることはないだろう。人が多くて息苦しい都会を離れて、生まれの地との縁をつなぎ直すのも有意義なゴールデンウィークの使い方だろう…と自分を納得させている。
ディーゼルエンジンを響かせて、緑の水面を下に見ながら崖のような斜面を進む山岳鉄道、特急ひだ。四方八方を囲む、立山連峰とは似つかない卑近な山々が安心感と帰ってきた感を与えてくれている。
追記:家についてから田んぼでカエルが大合唱してます。更に帰ってきた感が増しました。