ごはんが好きである。ごはんを食べることはしあわせだからである。
たまに食欲増進文章を書きたくなることがある。読んだひとが「おいしそう」「食べたくなった」「想像しちゃった」と思っていただけるような文章を指がおもむくままに書く。とても楽しい。大好きだ。
『ふわふわのホットケーキが食べたい。
たまごと牛乳を混ぜよう。やわらかい黄色になったら小麦粉を丁寧にふるって、もしくはホットケーキミックスも投入だ。キッチンに常備されているのならバニラエッセンスも少量加えよう。香りが格段によくなる。
温めておいたフライパンにそうっとおたまひとすくい分流し込む。ととと、と火を弱火にするのを忘れない。じっくりゆっくり焼くのがホットケーキの秘訣である。
その間にサイドを準備だ。バターに蜂蜜、メイプルシロップ、いちごジャムやブルーベリージャムを思いつくままに並べていこう。ホットケーキは朝食としても最適だからレタスや厚めに切ったハム、薄切りきゅうりにプチトマトを添えたっていい。ヨーグルトなどあったら最高だ。
ふつりと泡ができはじめたらひっくり返す。美しいきつね色が見えたら大成功だ。ボウル一杯分を全部焼いたら、さきほど用意したトッピングで自由に盛ろう。
最初はそのままのホットケーキをひとくち、ぱくり。
素朴な味わいにほんのりと甘みが伝わってくる。香ばしい焼きたての匂いといっしょに味わう。表面のさくっとした食感と中のふんわりを楽しむのだ。小さめに切ってバターでもひとくちかじる。バターと蜂蜜も相性抜群だし、メイプルシロップが染みたものもおいしいに決まっている。
ヨーグルトにブルーベリージャムを入れてホットケーキに添えるのもまたよし。ホットケーキの甘みとハムの塩っ気を足しても合う。
今度は薄切りもちを砕いて入れたらもっとふっくら焼けるだろう。みりんを入れれば違う甘さが楽しめる。牛乳を控えめにして絹ごし豆腐を混ぜればふんわり度が段違いだ。
ああ、ふわふわのホットケーキが食べたい』
こんな感じの文章である。こういうのを書くのが大好きなのだ。読んだ相手の経験や過去の思い出を利用して想起させる手段である。
ちなみにこれには『文章の字をそのまま脳内で文字として受け取るタイプ』には伝わりにくいのではないかという弱点がある。さてどのようにしておいしそうに受け取ってもらえるのか――私の修行はまだ続くのであった。