中心にあるのは人間(you)ではないかも(Material Design 3やリキッドグラスに触れながら)

jagaimo2
·
公開:2026/2/23

考えたことメモ。

1.

Material 3(MD3)やAppleの近年のリキッドグラスUIは、共通した構造的変化がある。というのは、 "AppBar"だったり"グローバルヘッダー"的なUIが画面を分断しないデザインになったこと。

普通に考えると、わざわざナビゲーション周囲の余白を設けると、(特にスマホでではただでさえ貴重な)画面のスペースを余分に使うだけに思えて不思議である。

なぜ主要なデザインシステムが同時期にこの特徴を持ち始めたのか。


2.

MD2からMD3への仕様変化を見る。

https://m3.material.io/components/app-bars/overview より

  • M2:大胆なコントラストカラーにより上部のAppBarとその下のコンテンツを区別

  • M3:スクロールすると、カラーフィルオーバーレイがAppBarとその下のコンテンツを分離( → つまり、スクロール以前は分離していない)

ここで示唆されるのは、

構造(分離されているか否か)が常在的なものから、状況的なものへ移行した

という点。

フレームは最初から存在するのではなく、必要に応じて生成される。


3.

一旦別の話。

MD3はキャッチコピーで「You=個人化」を前面に掲げる("Material You" )。 壁紙から色を抽出し、UIが“あなた仕様”になると説明される。

うんうんなるほど、という感じであるが、ちょっと疑ってみる。

もし"You"=個人化=パーソナライズが壁紙抽出に依存するというなら、その「You」は人間そのものというより、単に入力変数であると言える。


4.

自分はMD3について、ダイナミックカラー等の機能による”Material You”のコンセプトや時勢的なアクセシビリティへの要請等から、パーソナライズ中心の進化と捉えていた。

しかし、「分離はスクロールに依存する」「色は壁紙(や内容物)に依存する」「You」というよりState(状態) である。

UIは人間を中心にしているのではなく、 状況変数に反応している。

“Material You”の主語は、

レトリック上はYou 実装上はState

なのではないか?


5.

ここで二つのモデルが併存。

モデルA:人間中心ナラティブ(”Material You”と聞いて最初に浮かぶイメージ)

  • UIは個人に適応する

  • パーソナライズは主体性を反映する

  • 表現は退屈さを克服する(後のM3 Expressiveへ)

モデルB:状態中心アーキテクチャ

  • UIはスクロールに反応する

  • UIは環境入力に反応する

  • 構造は固定されない

  • 分離は条件付きで発生する


7.

軸はこうかもしれない:

  • 「固定レイアウト」から「適応レイアウト」へ

  • 「恒常フレーム」から「条件生成フレーム」へ

  • 「プリセットスタイル」から「演算生成スタイル」へ

デザインは状態の関数なのか?

スクロールも、壁紙も、アクセシビリティ設定も、XRにおける空間や身体位置も、すべて状態変数。

この見方は「人間中心かどうか」という議論を一旦回避する。

となると新たな疑問。

状態駆動型構造において、何が不変なのか。


8.

MD3やリキッドグラス的なフレームレスは没入感を高める。

しかしアクセシビリティは:

  • 境界

  • コントラスト

  • 構造的安定性

を求める。

分離が条件的になると、 構造の恒常性が弱まる。

適応性と認知的安定性は結構、相反しそうな気もする。


9.

UI進化における「人間中心」はナラティブでしかないのか?:

  • "You = 壁紙"というのが(事実、個性なんてその程度だとしても)ちょっとあんまりな気がする。

  • 最近のOSは「*年前の写真」とかをやたらpushしてくるが・・・

  • 「タイムライン」はむしろアルゴリズムが”You”を押しつぶす。

  • 意外とこのへんは未だ答えのない問題なのかも。

条件生成フレームにおいて構造的連続性はどこにあるのか?:

  • 例えば、XRでは(PCやスマホのような"短形のスクリーン”ではごく一般的な)画面をぶったぎるようなUIのレイアウトは不可能になる。

  • 二つ折りのスマホも出てきたし、スクリーンの種類も増える。

  • 街中のサイネージもいろんなパターンが増えている気がするし

  • というようなことを考えると、確かに画面をフレームで分断せずに浮遊しているようなUIのスタイルは一つのスタンダードとして成立していくのかもしれない。