こじらせ1009が見たい

jason
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09の様子を見にきたおばあとたまたま会う機会があって、ルークは話してる内に察する。そんで街案内などをするんだけど、おばあの方は10が彼氏だって気付いてなくて色々09について話す。

こういう子でね、あなたみたいにいい子でね、道中話す内容はジェイミーの自慢話ばかりで、本人から聞いていた厳しい!って印象とは全く違う。にこにこ聞いていたルークだったけど、「だからね」の続きに動きが固まる。

「幸せになってほしくてね」

「幸せ?」

「いいお嫁さんを見つけて、孫の顔を見せてほしいの」

「嫁……?」

ルークの頭はいつも不安でいっぱいだ。

次の瞬間にもジェイミーがどっかにいったらどうしようとずっと怯えているし、それで毎日束縛だってしてしまう。なのに、実祖母からこぼれた言葉はすとんとルークの胸のなかに入って、じわりと広がった。

優しいやつだ。男気あふれるさまはかっこよくて、美人で、かわいい。嫁とかに限らず、俺以外の誰かが横にいるときの幸せそうなあいつが思い浮かんだ。ああ、いいじゃん。俺は全然よくないけど、けど、あいつは幸せそうじゃんか。今まで無理やり引き剥がしてきて自分に縛り付けるようにしていたそこに、もしかしたらそうなり得る道はいくつもあったのかもしれない。

今まで目を逸らしてきていた自分の身勝手さを急に突きつけられた気がした。あいつは俺以外にいくらでも好くような奴らがいて、幸せになれるようなやつだ。この関係には俺のエゴしかないんじゃないか?いやだって、今更だろ。今更だよ。でもさ、今ならまだ間に合うんだ。そうだろ。分かってて無視してたんだろ。大好きなほど不安になるくせに、なんだかこれまで一番に居心地がよかったから。

スマホを見ればジェイミーの居場所はすぐに分かる。中華街の入口まできて、多分ここにいますよと股下ほどの身長しかない老婆へしゃがんで微笑んだ。手を振って見送る。

ポケットからスマホをもう一度取り出した。これから普通のルークなら絶対にしないようなことをするつもりだった。深呼吸しようとして、止める。冷静じゃないほうがいい。そうでもないとできっこない。

『別れる』

そう送った。この行動は、ルークの愛が自分の身勝手さを上回った証拠だった。愛?愛か。これは愛か。自分以外のものになるなんて考えただけで嘔吐感がせり上げるほど嫌でたまらないのに、ジェイミーが幸せで笑ってさえいれば、なんてこんな不条理は、普通に考えて愛以外の何物でもなかった。

震え続けるスマホに『嘘だよ』と打ってしまいそうになるから、画面も見ずに電源を落とした。