ガス代が安かったので、本を沢山買った。
小野不由美の魔性の子、これは繊細で、特異で良い。
角田光代のひそやかな花園、これも善く、奇特で密やかだ。
これには例の栞がとてもよく似合った。
恩田陸の夜のピクニックは、少年2人が物語の初めに出てきて、素直で朴訥で良い。
六番目の小夜子は、いかにも求心的だ。
読むものが沢山あるのは幸せだ。
性急な文章は、単に節が短いとかに関わらず、そこに魔法がかかったかのように、素早く読み進めることになる。
それでいて、ゆっくりと息を呑みながら読み進めなくてはいけないところもある。
そういう、小説独特の、緩急が好きだ。私もそれを操りたい。
浮き立つ気持ちだ。
本がある。
まだ読んでいない、終わったとも、終わっていないとも言える物語が、手元にある。
そして、小説とは、なんて儚くて短い物語だろう。
同じ物語を、永遠に読み続けられればいいのに。
終わりのない物語であればいいのに。
小説を読み進めるも、読み進めるのが勿体ない。
綺麗な小説を読むのは、完成された美しい彫刻を、ノミで削り取るような感覚だ。
とても、勿体ない。
いや、美しい料理を食べるのに似ているか。
食べなければ私は満たされないのに、食べるのは勿体ない。そんな感じだ。
どうあっても、あなたとわたしは食うか食われるかの存在なのだ。きっと。