次世代Webカンファレンス登壇を終えて

JJ
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先日次世代WebカンファレンスにてWeb3で登壇した。その感想を記しておきたい。

もうすでにこのブログを書いている時には日数が経ってしまい、台本なしで話をしてたのもありかなり、うる覚えだが出てきた話とEIPを紐付けておくことによりより深く知りたい人に対して技術的な一次ソースを渡せたらと思う。また自分の発言に対しての思想や考えていたことをまとめて来年の自分がまた読み返した時に思考を振り返れる形にしておきたい。

会としての反省

マイク持つの久しぶりで座ってるしweb3というドデカトピックで緊張してあんまりグイグイ意見をぶつけに行かなかったのは反省。他の登壇者同士の議論を聞いて自分の中で思考を整理してる間に別の方から発言が飛ぶのでなかなかパネルディスカッション方式は難しいなぁと思った。自分は話を聞いて思考をして、可能性を考えて、文章を組み立ててからじゃないと話がまとまらずあっちこっちいってしまうので聞いてる人の負荷を上げてしまうという心配から発言が遅れてしまうので直したいがどうすればいいんだろうなーと終わってから考えてる。良い解決策ください(?)

Identity

まず僕自身が考えるweb3のパラダイムシフトは「資産を扱えるIdentity層がインフラに存在すること」であると思っている。Identityと言うのは概念であり、実態はEOAやContractWalletを指している。

「仕事やエンジニアとしての自分」としてもTwitterにあまり顔を載せてないが僕にとってのIdentityはハンドルネームであったり、アイコンであったり。実在する人物ではなく「JJ」と言うインターネット上の人格であり、プライベートの「Junya Kono」は友達やInstagram上の人格であると割と分けて考えている。どっちかが本当の自分とかではなく全て僕の人格のうちの1つでそれを是として進んでいるのがインターネットで、その軌跡を辿りやすい形にしているのがブロックチェーンだと考えているため、僕の思想と相性が良い。

これがインフラのレイヤーにあるおかげで「僕」がアプリケーションをiPhoneを通して操作してるのと同じようにブロックチェーン上の「JJ」がアプリケーションをdAppsを通して操作していて、その軌跡がトランザクションとして残ること自体に価値を感じている。つまりアプリケーションに閉じてない人格を作ることができる技術がブロックチェーンの良さだと考えている。

ウォレットのマスアダプションの難しさ

僕の主張の中でも出てきた気がするが、上記のメリットを受けるためには今現状、ウォレットを作らないといけないが、これがまだまだマスアダプションまでのギャップになると考えている。昨今はEOAをサービス内で持っているものやその部分だけ切り出して提供してるSaaSがあったりするので少しずつ解消出来ていると思うがもっとユーザーが意識しなくてもいい、または管理のし易さが向上しないと「なんかむずそう」を越えれないし、意識した上で越えないと罠が多いみたいな現状を打破しなければならないなーと感じている。

またIdentityを意図せず分割しなければならない文脈も大きいと考えていたがここはEIP1665での解決が見えそうだなーと思っている(ただ現在まだReview段階なので解決したとは言えない)

EIP1665についてはZennのThirdwebの記事やGMOの記事がよく解説されてるので貼っておく。

中央集権と非中央集権

今回あんまり大きくは話にならなかった(そこまで深掘らなかった)ものとして、よく言われるdecentralizedをどこまで強要するか問題があると思っている。1番よく言われるのは「NFTの画像をS3に置いたら中央集権なんじゃないの?」みたいな話。僕はIdentityが非中央集権でなければなんでもいい派なのであんまり関心が強くないが仕事としてブロックチェーンを使う以上クライアントに言われたら自分が出せる案をいくつか出すべきなので、完全非中央集権から段階的に中央集権に向けて提示している。

完全非中央集権とはフルオンチェーンNFTと言われるものだと認識しているがNFTのデータセット(JSON Schema)もオンチェーンに存在し、画像データもsvgなどでオンチェーンに載せているものを指している。ただこれはブロックチェーンに対して大きなストレージを割く行為に値し、computeのリソースを食う設計なので他の実装に比べてブロックチェーンに支払う手数料が高くなりがちである。そのためビジネスとして、また最近使うのは大体マーケ手段としてみたいなのが一般企業だと多いのであまり選択されない。

その次によく使われる手段が分散型ストレージに格納する手段である。その中でもipfsはよく使われる分散ストレージだと思うが大体ここに落ち着く。世の多くのNFTもipfs hostingが多いように思える。データ自体も分散型だしdecentralizedな状態でしょうと言うわけだ。

その次がS3などに配置する方法だが安定していて、要件によってとかリテイクによって修正が容易であるとして使われることも少しはある。

この3つのうち2案目が安牌になりがちだがユーザーが実際にその画像を見る時にはやはり中央集権的なサーバーを経由してたりする。大きなマーケットプレイスとしてOpenSeaというサービスが存在するがそこに表示されている画像もまたCDNが間に挟まっているのでやはりUXを考えると直接ipfsから取ってくるなんてのはまだまだ難しい。僕が実装者であった場合も実際ユーザーが見るときはipfs gatewayというサービスを通して提供している。web3系のSDKだと内部でしれっとipfs gatewayを通したURLを使っているものもある。gatewayとして少し前に話題になったのはCloudflareであろう。

つまり、NFTに限ったとしても完全に非中央集権でUXのよいアプリケーションを作るにはインフラやその周辺技術のアップデートがないと厳しい現状にある。

ので、「それ非中央集権なの?」みたいなのの僕としての回答は「非中央集権に拘ってないよ」になる。あくまでIdentityが非中央集権であればよくて、NFTのアセットがどこにあるかなんてのはどうでもいい。そこに対して価値を持とうとする考えを改める方向になったほうが健全だと考える。つまり、NFTの画像に価値があるのではなく、その所有に対して価値を見出すのが正しい。そうすれば「画像はコピーすれば〜」とかみたいな意見に対して根本が違うよと説明もしやすい。あくまで価値があるのは画像ではなく、所有であると知ってほしい。

Xの反応に対しての個人的な解釈

何がバリアになってるか

開発者としては楽だけど、たとえば仮想通貨で払ってもらうにしても一般の人々が仮想通貨を入手して支払うまでのハードルが高すぎる

これに関しては仮想通貨を得ることは確かにハードル高い。銀行開設にも同じようにしんどさあるよねだから一緒じゃね?みたいな議論だったと思うが、得るハードルを越えるための規約としてECR-2771が存在しているのでdAppsを触るのにハードルにならないと思っているしそういう話をしたつもりでいる。

それよりもウォレットを持ち、そのユーザーに署名させることが大変なので仮想通貨を全く持ってなくてもサービスを使うことはできるし、何度も言うがIdentityが大事なので署名さえできれば最低限よいのである。

Web3 って理想は分からなくもないけど、実際は足りないものだらけで、yak shavingを繰り返してるうちに本質を見失って何も前に進んでない印象。

これに関してはそもそもこの"理想"が人によって違うとか世界の事例を知らないせいで前に進んでないように思えるのかなと思う。ここで言う"理想"や"本質"は僕の中の答えはIdentityだが、そこだけに絞っても

「ウォレット作るのむずいか?」→「じゃあ俺らが全部管理してあげるよ!」→「え?カストディ事業者かって?法律?」→「マルチシグはどう?Google認証して秘密鍵の1部はユーザーのDriveに置くとかさ!」

みたいにyak shavingを繰り返してるかもしれない。ただ日本の法律という壁が分厚すぎるだけで世界だと全然日本よりも進んで活用できてる事例はたくさんあるのでweb3が止まっていて本質を見失ってるかでいうとそうでもない気がする。日本は見失ってるかも。

なんか今のところ「現代社会においては自分たちが思い描いた理想は実現できない」って話に聞こえる

僕も同じ意見。理想の実現はできてない。とは言えこれは日本においては。の区切りがあり別の国では同じ技術を使いもっと活用できていて、経済圏としても成り立つものだと考えてる。

僕の実現したい未来は仮想通貨を労働の対価として得て、仮想通貨で買い物ができることである。そしてその軌跡がトランザクションとして残ることである。余力があればDeFiで運用をするみたいな資産運用まで行えるわけだ。これは技術レベルであればもうすでに出来る。邪魔をしているのは法であったり、リテラシーであると思っている。現にスイスでは仮想通貨での納税も行える。

買い物でも2018年からヤマダ電機はBTCでの支払いもできる。

つまりユートピアは別に遠い現実でもない。だが"現在は"できてないものが多い。

「Web3である必要」云々はもちろんあると思うが、そもそものセキュリティが担保できていないところに帰結すると思う。

その通り。あとその保険もない現状がリスクリターン合わないみたいなのはそうだなと感じる。例えばAMEXが悪用された場合、AMEXがある程度補填してくれたりする保険が存在する。が、現状Walletをなくす(つまりアクセスできなくなる)ともうどうしようもないというのがブロックチェーンの世界なのに、web2よりもはるかにcrypto人口に対して数の多い詐欺が横行している。

つまり、資産をここに持つのがリスクになる。コントラクトのソースコードが見えているから安心だねとかではなく、普通に秘密鍵は数十文字の英数字でありバレたら1発KOなんだから頼りないに決まってるし、そのためにLedgerなどみたいなコールドウォレットを使うがそれとdAppsを繋いでるライブラリに脆弱性がでりゃ1発KOだしであまりにも資産を置くのに不安な場所ではある。

政治家のお金の使い方の透明性確保のためにWeb3を使って欲しい、なるほどハマる

まず最初にブロックチェーンの有用性を示すのに対して議論の中でも国の決議とかそういうのはブロックチェーンでやろうぜみたいなのがあったと思うが透明性に対して価値があるものは使うのが良い。国間の取引でも活用の機会あるだろうし、最近だと例えばカーボンクレジットの分野でブロックチェーンを活用するとかはとても興味がある分野である。

またそんな大きな話じゃなくても例えばGoogle Cloud Certificateを証明するのにブロックチェーンを使うとかはそういうサービスも存在するので正しい使い方な気がする。まずはここからって感じ。

「そのユートピアってないよね」って言われがちだけど、最初にプロダクトを作った人にたいしてロイヤリティを発揮していくような文化は好きだし、エンタメやクリエイターと相性がいい

僕の発言を取り上げてくれている。これは少し自分の仕事を正当化する発言だったかもなと思うが経済圏を作るための技術としてちゃんと使っていきたいし、今まで出来なかった流通の可視化やそれによるグラフの生成の後、そのものを作った人にその後のアクティビティによるロイヤリティみたいな文化があったのは良かったし、これは実際実現したいなーと考えている。これは単純に技術的な課題とかではなく、サービスモデルを考えるって感じなので頭捻るしかない。頑張ろう。

@jj
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