音楽はわたしの諦めたジャンルだ。諦めた、ということはまず志していたわけで、3、4年ほどではあるが勉強して曲を作っていた。
声優さんに興味がなく音の情報処理に時間がかかるため、ゲームは常に音無しでやっているし下手するとアニメまで音無しで見ることがあるので、その苦手さたるや凄まじいものである。そんなわたしが、若かりし頃ボーカロイドを予約してまで買った。巡音ルカだった。公式のブログで事前に公開されたアメージンググレイスを歌う声が、本当に本当に好みで気づいたら次の日には楽器屋に予約をしに行っていた。(当時カードなど持っておらず、通販ができなかった)
それから一年ごと、1月30日はガーネットのアクセサリーを買ったり曲を作ったりした。DTMなんて全く知らなかったわたしはイチからの勉強で、初年度は一年かけてまともに作れたのは2曲だけだった。幸いドラムとアコースティックギターをたまに触っていたのでコードなどについては多少知識があり、作曲についてはそこそこすぐに理解できたのだがやっぱりそれだけでは曲って作れないもので……結局音楽はやめた。
一番の理由は、数年かけて勉強して自力で曲を作ってもマジでダサいものしかできなくて、原因を突き止めるため自分なりに調べて熟慮した結果『絵をやめて絵と同じくらい打ち込まないとダメ』で『金をかけないとわたしが満足するものは作れない』と気づいたから。音源や楽器の値段も調べた。同じ金額でプロ雇った方が早いし満足できる。悲しいが現実を受け入れた。
音楽を諦めたわたしはそれから何をしたかというと、音楽の要素を取り入れた創作を始めた。ローカルフォルダにサイトを作って更新する形だけど楽しかった。(誰にも見せずに作ったのは7年ほどコントラバス奏者をしていた身内に知られたくなかったのと、自分のことを慰めるためのもので他人に見てもらう必要がなかったから)
これはわたしの中でのけじめであり救いだった。例えると、価値観の違いで結婚はできないけど友達として適切な距離で仲良くすると決めた感じ。音楽そのものは才能も情熱もないから諦めたけど、嫌いになったわけじゃないし自分のできるジャンルに転用して活かせば無駄にならない。好きな服が似合わないのもドールが解決してくれたし、名言を覆すような形になるが『諦めてもそこで終わりじゃない』と感じている。
人間生きてるとどうしても物理的や精神的や金銭的な理由で『無理』な現実が生まれてしまうけど、それとどう接していくかを考えるのが絶望しないコツなのかもしれない。