W26 2024.6.24 - 6.30 『あんのこと』『ルックバック』『WALK UP』『春のこわいもの』

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6月が終わって今年も半分が経った。この週報も今年の頭から書くようになったので半年続いたことになる。誰かに読まれることは特に求めていないので、書いた文章をSNSでシェアするというようなことはしていないのだが、誰かが読むかもしれないという若干の緊張感を持って書くのがちょうど良い。毎週、主に観た映画を振り返って次の週のことをなんとなく考えながら書き留めておくのは、思ったよりも自分にとって良く、以前よりもあっという間に日にちが過ぎていくという感覚が減った気がする。今後もなるべく続けていこうと思う。

映画は今年に入ってから37本を劇場で観た。全く映画館へ行けなかった週もあったが、多い時には週3,4本を観ていた。続けて映画を観るとせっかく観た映画を自分の中で咀嚼できないままに次の映画を観てしまっているのがもったいないような気がしてくる。これはこの週報を書くようになって感じるようになったことだ。劇場で観るのは週に一本くらいにして一週間その作品のことを考えるくらいが自分には良いのかもしれない。とは言っても、映画作品の劇場公開期間は限られているので難しいところだ。良い映画でも、世間に引っかからないと2週間とかで終わってしまう。

習慣であるランニングはこの半年で715kmだった。去年の上半期は確か800kmだったので落ちてしまっている。下半期はもうちょっと走れるようにしたい。

この半年間は年度末あたりの一時期はかなり忙しかったものの、それ以外はのんびり過ごしていた。コードを書く量がだいぶ減ってしまっているので、日々書き続けられるように気持ちを上げていきたい。


上半期最後の今週は5kmを5回で25km走った。だんだん湿気が増してきて、日中は本当に走るのがしんどい。

ゴーヤチャンプルを作ったり、ズッキーニを使ったパスタを作ったりして旬の食材を楽しんでいる。青々とした食材は見るからに体に良さそうで良い。

毎年、家庭菜園で育てた枝豆を採れたてで分けてくれる友人がいて、今年もそれをいただいた。朝に採って渡してくれるそれは、香りから違くて少し芋類のような噛みごたえがあって本当に美味しい。枝からさやを切り取った時にはふわっと新鮮な香りがする。

ご馳走様でした。

『あんのこと』

入江悠監督、河合優実主演。幼少期よりまともな教育を受けさせてもらえず、売春を強要され、薬物中毒に陥ってしまった主人公が警察に捕まった際に取り調べを行った刑事と出会うことによって生き方が良い方向へと変わっていくが、そこにパンデミックやその刑事の不祥事が重なり、また困難が訪れる。

オリジナル脚本ではあるが、実際に起きた出来事が元となっていてモデルとなった少女に関する新聞記事が企画の発端らしい。入江監督にこのような作品を撮るイメージがなかったのだが、作品の出来は素晴らしく、これ以降どのような作品を作っていくのか今後に期待が高まる。

題材や規模感は違うけれど、先月観た『人間の境界』と同じものを感じた。世の中から見過ごされてしまいそうな問題や人物に光を当てて、その存在について世に問い、観た人たちに考えさせる。直接、解決には繋がらなくともこういった作品があることで、気づき、考える人が増えることはきっと少しでも世の中を前へ進めているのだろう。

『ルックバック』

藤本タツキの読み切り漫画作品の映像化。原作は公開時にすぐに読んだ。明言はされていないが、京都アニメーション放火殺人事件に対する作品だと思われる。何かを作って評価を得ることに喜びを覚え、創作の虜になり、ひたすら描き続けていた人が、捻じ曲がった思考を持つ者によって突如命を絶たれてしまう。その人たちは作品を通してしか人に知られることがなかったけれど、それぞれに作ることに取り込まれていったストーリーがある。

原作も圧巻の作品なのだけれど、アニメーションもその世界観を壊すことなく見事に拡張されていた。同じ机に同じように向かい、ひたすら描き続ける背中の絵が特徴的なのだが、漫画よりもじっくりとその姿を映し続けるところなんかは映像だから変化をうまく表現できるのだなと思ったし、それによって深みが増したと感じられた。音楽をharuka nakamuraが担当していて、いつも聴いているアーティストで好きなのだが、これもとても良かった。

この作品はもう一度大きなスクリーンの劇場で観ておきたい。

『WALK UP』

ホン・サンス監督作。都会のアパートで繰り広げられる人間ドラマ。全編ゆったりとした会話劇なのだが、節目節目で時間が飛びアパートの中で登場人物たちの暮らしぶりが変わっていく。アップダウンもひりつくようなやりとりもない登場人物たちの会話をただ聞いているのが心地よい作品だった。

『春のこわいもの』川上未映子

オーディオブックで聴いた。元々オーディオブック用の書き下ろしらしい。

パンデミックが始まった頃の人々の様子を描いた短編集。「こわいもの」は感染症を表しているのではなく、登場人物たちの身の回り、もしくはその人物自身に潜む”こわいもの”のことだ。そこにパンデミックが始まった時期のあの不安で不穏な空気感がうまく使われている。

中でも一番長い『娘のこと』では、嫉妬・卑しさからやってしまった行為から、もう誰にも謝ることもできず、それ故に赦されることはなく、きっと死ぬまで心に残る後悔や懺悔の念を招く主人公のことが描かれていて、本当にこわい。登場人物みんなの言動にこわさが潜んでいる。恐ろしいではなくこわい。

次週

  • 『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』を観る予定

  • 川上未映子の小説を引き続き読む(聴く)

  • 上半期の始まりなのでリフレッシュしてやっていきましょう